2015 Fiscal Year Research-status Report
臭素系難燃材の微量曝露が、アレルギー疾患に及ぼす影響の検討と防止対応の研究
Project/Area Number |
15K19251
|
Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
田中 満崇 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 研究員 (80647264)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 臭素化難燃剤 / アレルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
防燃効果を目的に室内製品等に広く使用され、近年、ハウスダスト(家埃)やヒトの血液、母乳においても広範な汚染が確認されている臭素系難燃剤(ポリ臭素系ジフェニルエーテル類:PBDEs)を検討対象とし、それらの微量曝露が、アレルギー疾患(アトピー性皮膚炎)に及ぼす影響を実験的に評価した。 アトピー体質を持つNC/Ngaマウスの耳介腹側に、2-3日おきにダニアレルゲンを計10回皮内投与し(5μg/10μL)、アトピー性皮膚炎様の病態を形成させた。臭素系難燃剤は、感作4日前より週1回、計4回腹腔内投与した。その結果、ダニ抗原投与群によって、ダニ抗原投与してない群と比較してマウスから採取した血清よりアレルギー応答のひとつであるIgE抗体価の増加を確認した。また、耳介の症状変化(乾燥肌、発疹、掻爬傷、耳介厚(腫脹))を経時的に四段階で評価し、総点数を症状スコアとして皮膚炎の重症度を比較した結果、各群において経時的な影響は認められたものの、解剖直前においてコントロール群(ダニ抗原投与のみ)の上昇により、臭素系難燃剤曝露グループとの差が小さくなる傾向になった。さらに、解剖後にマウス耳介組織から抽出したタンパク質を用いたアレルギー関連タンパク質の定性定量実験(ELISA)による影響も一部確認したがその影響は大きなものではない可能性が示唆された。 以上の結果より、臭素系難燃剤における影響は、比較的早い段階で発生している可能性が示唆される。そこで、今後は比較的早い段階におけるマウス耳介組織しおける抗原提示細胞、種々のタイプのT細胞・NH (natural helper) 細胞、上皮細胞・ストローマ細胞とそれらの相互作用に注目し、免疫応答の源流で臭素系難燃剤によるアレルギー増悪機構を解明し、さらに、病態の発現・増悪の早期に変化する指標を探索・同定し、アレルギー防止に役立てたいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今回の研究で使用する臭素系難燃剤を購入するにあたり、学内での購入準備や購入先からの納期、また、廃棄の仕方等に多くの申請や審査に時間がかかってしまった。現在は、スムーズに購入手続きも可能となり、実験は進んでいる。また、どの臭素系難燃剤をどのような濃度で行なうのかの検討に時間を要してしまった。さらに、現在、臭素系難燃剤のアレルギーマウスにおける皮膚炎症状の検討の中で、複数の臭素系難燃剤を複数の濃度で行なった結果、その影響は難燃剤の種類や濃度には大きな影響は認められなかった為に進行がやや遅れている。具体的には、マウス耳の状態変化(乾燥肌、発疹、掻爬傷、耳介厚(腫脹))を各4段階のクリニカルスコア化し、その結果、実験中期に有意な変動が確認された。後期に入ると、臭素系難燃剤群だけでなくコントロール群でも耳の若干の乾燥や赤みが増してきた。約4週間飼育後のマウス解剖時の耳介組織のホモジネートサンプルから抽出したタンパク質によるアレルギー関連因子の大きな変動はELISAでは確認できなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
後の検討として臭素系難燃剤における影響は、比較的早い段階で発生している可能性が示唆される。そこで、臭素系難燃剤投与中間の段階におけるマウス耳介組織における抗原提示細胞、種々のタイプのT細胞・NH (natural helper) 細胞、上皮細胞・ストローマ細胞とそれらの相互作用に注目し、免疫応答の源流で臭素系難燃剤によるアレルギー増悪機構を解明し、増悪機構を体系的に細胞、分子レベルで解明する一方、病態の発現・増悪に先立って潜在的に変化する指標(予防的バイオマーカー)を探索・同定のためにさらなる検討をしていく予定です。具体的には、実験4週間後の影響ではなく、実験2週間後(中間の段階)における実験を行い1) クリニカルスコア ⇒ 2) 病理組織(炎症)観察⇒ 3) サイトカイン・ケモカイン測定 ⇒ 4) シグナル伝達の変動を検討していく予定です。さらに、アレルギー増悪だけでなく、酸化ストレスによる炎症のシグナル伝達に関与する上流のタンパク質に変動がある可能性も考え、ウエスタンブロット法によるタンパク質の変動を検討する予定です。
|
Causes of Carryover |
初めの試薬購入及びその準備に時間がかかり思うように研究が先に進まなかった為、さらに実験中の購入及び外部発注予定の実験に遅れが出た為に使用額が変りました。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は使用する臭素化難燃剤や濃度を固定し、購入もスムーズに行なうことが可能となり、はじめの方針に従って研究を遂行する予定です。
|