2015 Fiscal Year Research-status Report
脂肪酸摂取からの認知機能低下予防-インスリン抵抗性・炎症の制御機構を介して
Project/Area Number |
15K19253
|
Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
大塚 礼 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, NILS-LSA活用研究室, 室長 (00532243)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 脂肪酸 / 認知機能 / インスリン抵抗性 / 炎症 / 縦断研究 / 中高年 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢化に伴い認知症有病者は急増している。申請者らはこれまで日々の食事を介した認知症の予防を目指し、特に脂肪酸摂取に着目した解析から、数種の脂肪酸に認知機能低下を抑制する効果があることを見いだした。本研究では18年間にわたって追跡された地域住民コホートデータから、インスリン抵抗性や炎症を介して増悪する認知機能低下を脂肪酸摂取が抑制するのかを検討し、認知機能低下の予防に効果的な中高年期の脂肪酸摂取のあり方を明らかにすることを目的とする。 平成27年度は認知機能検査を含むNILS-LSA追跡調査「脳とこころの健康調査」を実施し、必要な追跡データを得るとともに以下の研究を進めた。追跡調査(平成25-28年実施)にはのべ2,100人が参加し、平成28年2月初旬に調査を終えることができた。 平成27年度にNILS-LSAデータを用い、実施した主な解析と結果は下記①から③の通りである。①肥満度と血清脂肪酸との関連:肥満度が高い者ほど血清中の飽和脂肪酸濃度および重量比(wt%)が高かった。②肥満度と脂肪酸摂取との関連:肥満度と飽和・不飽和など各種脂肪酸摂取は正の相関を示したが、摂食量を考慮すると、必ずしも肥満度と各種摂取量に特徴だった関連性を認めなかった。③肥満度とインスリン抵抗性、炎症指標との関連:肥満度とインスリン、インスリン抵抗性は強い関連性を認めたが、高感度CRP、白血球、血糖レベルは低~中程度の相関を示した。 地域から無作為抽出した高年者を多く含む本研究集団で得られた上記①から③の結果は、若中年者を対象とした本邦の先行研究結果とおおむね一致しており、高齢者における検討が少ない本邦において、学術的意義のある新知見と考えられる。これらの知見は本研究課題遂行上、基盤となるものであり、次年度以降の認知機能との関連解析に活用する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述の通り、計画時に予定していた平成27年度の計画「脂肪酸摂取とインスリン抵抗性、慢性炎症の横断・縦断的関連」についてはおおむね実施できた。ただし一部の縦断的解析については、平成28年度にも解析を継続して行う。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度から持ち越している脂肪酸摂取とインスリン抵抗性等の縦断的解析に加え、平成28年度は、体脂肪量・肥満度と認知機能、インスリン抵抗性、慢性炎症と認知機能の関連について検討する。具体的には、体脂肪量・肥満度と認知機能のそれぞれの経年変化を観察し図式化するとともに、両者の関連性を把握する。次いで体脂肪量・肥満度、アディポカインとインスリン抵抗性、慢性炎症の関連を確認した後、インスリン抵抗性、慢性炎症と認知機能の関連性を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
研究成果の発表が遅れ、海外での学会発表を見送ったことと、論文作成にかかる英文校正代を次年度に持ち越したため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記、持ち越した研究成果発表は、平成28年度以降に実施予定である。
|
Research Products
(4 results)