2015 Fiscal Year Research-status Report
エネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)の法医実務への応用
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15K19273
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
田中 直子 香川大学, 医学部, 助教 (60700052)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エネルギー分散型蛍光X線分析(EDX) / 感電モデル / 蝶形骨洞内貯留液 / 溺死 / 塩素 / 臭素 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 溺死事例での水域推定に関する検討について。 剖検例において、溺死事例22例と非溺死事例11例の蝶形骨洞内貯留液を採取し、エネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)を用いて点滴法にて測定した。溺死事例の内訳は海水溺死、淡水溺死それぞれ11例であった。試料中の塩素および臭素を定量したところ、海水溺死事例の塩素および臭素濃度はそれぞれ、11.6±2.6 mg/ml (平均±標準偏差;範囲9.1-18.1 mg/ml)および58.5±11.9 ug/ml (平均±標準偏差;範囲43.5-83.8 ug/ml)であった。淡水溺死事例における蝶形骨洞内貯留液試料中の塩素および臭素はいずれも定量下限未満であった。蝶形骨洞内貯留液から塩素および臭素を検出することが海水溺死の判断の一助となる可能性が示唆された。 2. 感電モデルにおける導体金属の同定法に関する検討について。 7週齢の雄Wister系ラットを対照群、通電5秒群、通電10秒群(各5匹)の3群に分け、通電群は麻酔下で胸部に電極を当て通電させた。通電装置の電極には直径5mmの銅を使用した。電極付着部位を含む周囲皮膚組織を採取しホルマリン固定した後、EDXで測定した。通電群では対照群と比較して高い銅のピークを検出した。ホルマリン固定標本より直接銅を検出できたことより、スクリーニング検査としてEDXが有用であると考えられた。組織学的検査において通電群の金属化現象が確認しづらかったため、EDX検査と併用することにより感電死の診断精度が上がると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
溺死事例での水域推定に関する検討について、剖検例において、溺死事例22例と非溺死事例11例の蝶形骨洞内貯留液を採取し、エネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)を用いて点滴法にて測定した。海水溺死事例の蝶形骨洞内貯留液より塩素および臭素を検出した。淡水溺死事例における蝶形骨洞内貯留液試料中の塩素および臭素はいずれも定量下限未満であった。蝶形骨洞内貯留液から塩素および臭素を検出することが海水溺死の判断の一助となる可能性が示唆された。雑誌に掲載され、おおむね研究計画書通りである。 感電モデルにおける導体金属の同定法に関する検討について、ラットを用いた動物実験において、ホルマリン固定した皮膚より導体金属として用いた銅をEDXにて検出し、スクリーニング検査としてのEDXの有用性を明らかにした。学会において報告し、おおむね研究計画書通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
中毒モデル動物を用いて、スクリーニング検査としてのEDX検査の可能性を検討する。有機リン系農薬、次亜塩素酸溶液および硫酸銅溶液をモデル毒物として実験を行う。モデル毒物をそれぞれラットに投与し、胃内容等を採取しEDXを用いて分析を行う。さらに、従来から用いられている分光光度法にて試料中の毒物濃度を定量し、EDXの結果と比較する。
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Causes of Carryover |
今年度はおおむね計画通りに進行し、若干の次年度使用額が生じたが、次年度に使用予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験モデル用動物、試薬等の購入に使用予定である。
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