2017 Fiscal Year Research-status Report
エネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)の法医実務への応用
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15K19273
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
田中 直子 香川大学, 医学部, 講師 (60700052)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エネルギー分散型蛍光X線分析 / ヨウ素 / バリウム / 造影剤 / ヒ素 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 剖検例における異物の同定について。 死後CT検査で脳表面に高吸収域がみられた剖検例において、同部の脳表面に付着していた黄色顆粒をエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)を用いて測定した。黄色顆粒からはヨウ素の高いピークが得られた。ヨウ素は古くから造影剤に利用されており、この顆粒は30年以上前に受けた脊髄造影検査で用いられた油性造影剤の遺残物であると考えられた。この所見がみられた場合は比較的高齢であると推察でき、身元不明事例において年齢推定の一助となる可能性がある。 死後CT検査で消化管内に高吸収域がみられた剖検例2例において、消化管内の褐色の糞石様のものあるいは白色結石をEDXで測定したところ、バリウムの高いピークが得られた。消化管造影検査後のバリウム遺残による合併症の報告は多いが、成分がバリウムであることを証明した事例は少ない。合併症が起こるまでの期間は1日から数年とさまざまで、検査日の特定が困難な場合もある。また、バリウム製剤の誤嚥による死亡例や、医原性の硫酸バリウム肺塞栓なども報告されており、より正確な死因究明のためには原因物質の確認が重要であり、EDXが有用であると示唆された。 2. ヒ素の測定について。 EDXを用いて、ろ紙を用いた点滴法でヒ素の検量線を作成した。10-1000 ug/mlの範囲で直線性が得られ、検出下限は5 ug/mlであった。血液中のヒ素の測定は難しいが、胃内容のヒ素は測定可能であると考えられ、法医学分野に応用できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
剖検例における異物の同定について、死後CT検査で脳表面や消化管内に高吸収域がみられた剖検例において、これら異物をエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)を用いて測定した。それぞれ、ヨウ素あるいはバリウムの高いピークが得られ、EDXのさらなる有用性が示唆された。学術雑誌に掲載あるいは受理され、おおむね順調である。 ヒ素の測定について。EDXを用いて、点滴法でヒ素の検量線を作成した。10-1000 ug/mlの範囲で直線性が得られ、検出下限は5 ug/mlであった。血液中のヒ素の測定は難しいが、胃内容のヒ素は測定可能であると考えられた。学術雑誌に掲載され、おおむね順調に進展している。 銅を導体として用いた感電モデルにおける、EDXによる導体金属の同定の検討が学術雑誌に掲載され、こちらもおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
EDXにおいてチタン、ケイ素およびマグネシウムの検出下限の検討、ならびに、剖検例の胃内容のEDX検査結果と薬物検査の結果を比較し、薬物摂取のスクリーニング検査としての有用性をさらに検討する。剖検例の胸腔内貯留液を点滴法にてEDXを用いて測定し、蝶形骨洞内貯留液と同様に海水溺死の判断に有用かどうか検討する。アルミニウムやスズなどによる感電モデル動物を用いて、通電部の皮膚を採取し、EDXを用いて分析し導体の金属が同定可能か検討する。
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Causes of Carryover |
今年度はおおむね計画通りに進行した。若干の次年度使用額が生じたが次年度、試薬、実験モデル用動物などに使用予定である。
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