2016 Fiscal Year Research-status Report
肝細胞癌に対する腫瘍融解ワクシニアウイルスJX-594と一過性免疫抑制の併用効果
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15K19312
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
長谷川 直之 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (00707820)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 腫瘍融解ウイルス / 肝細胞癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、進行肝細胞癌に対しては分子標的薬(ソラフェニブ)や肝動注化学療法等による治療が行われているが、その効果には限界があり、新規治療の開発が待たれている。近年、腫瘍選択的に増殖し腫瘍を融解壊死させる腫瘍融解ウイルスが癌の遺伝子治療用の基盤ベクターとして注目されている。腫瘍融解ワクシニアウイルスJX-594は、Thymidine Kinase (TK)を欠損することにより正常細胞内では複製不能だが、腫瘍細胞内では腫瘍が産生するTKを利用して複製可能となり、腫瘍を融解壊死させ,肝癌に対する臨床試験において良好な成績を示している。癌の抗癌剤耐性には癌幹細胞(Cancer stem cell; CSC)の関与が知られているが,近年,腫瘍融解ウイルスのCSCに対する融解効果が報告されている。我々はJX-594を治療抵抗性の進行肝細胞癌の治療に応用し、さらに免疫抑制剤による抗ウイルス免疫の抑制が及ぼす効果を検討することを目的とした。我々は肝細胞癌細胞株Li-7においてCD13+CD166-分画がCSCの性質を持つことを明らかにした。そこで、JX-594が肝細胞癌細胞株Li-7のCSCに及ぼす効果を検討した。Li-7は長期の継代培養によってマウス移植における腫瘍形成能を失っており、平成28年度は安定したin vivoモデル構築のために、長期継代培養でもCSCs分画が維持される新しいLi-7の培養方法を検討した。新しい培養方法で培養されたLi-7は、ヌードマウスへの皮下移植実験において通常培養のLi-7に比べて高い腫瘍形成能を示したため、これをhigh tumorigenic Li-7 (Li-7 HT)と名付けた。今後、JX-594ウイルスのLi-7のCSCに対する有効性をin vitro、 in vivoにおいて検証するとともに、免疫抑制の及ぼす効果についても検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究により、肝細胞癌細胞株の癌幹細胞分画を維持しつつ長期継代培養が可能となった。治療抵抗性の進行肝細胞癌モデルに対する腫瘍融解ワクシニアウイルスJX-594の効果を検討できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、JX-594ウイルスの調整を行い、細胞実験および動物実験を予定する。マウスモデルにおけるJX-594と免疫抑制療法の併用治療が及ぼす効果についても検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
実験系の進捗が予定よりずれてしまい、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
細胞実験および動物実験の際の試薬や動物購入費、飼育代として使用する。
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