2015 Fiscal Year Research-status Report
オートファジーに着目したH.pyloriによる胃がん発生メカニズムの解明
Project/Area Number |
15K19317
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
南條 宗八 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (70649285)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | オートファジー / DNAメチル化 / 胃癌 / Helicobacter pylori |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、当初の計画の通り、1)Helicobacter pylori(以下、H. pylori)感染による胃粘膜でのMAP1LC3Aメチル化サイレンシングと、2)ノックダウンによるmap1lc3aの機能解析を行い、期待された結果が得られた。 1)H. pylori感染のある胃癌患者30人から癌部組織及び非癌部粘膜を採取し、定量的メチル化特異的PCR法および定量的RT-PCR法でMAP1LC3Aのメチル化状態およびmRNA発現レベルを解析した。その結果、メチル化率は非癌部で70%、癌部で50%と高率であった。また、メチル化かつ低発現のメチル化サイレンシングは、非癌部で40%、癌部で23.3%であった。一方、H.pylori未感染粘膜5検体は全て非メチル化状態であった。さらに、胃癌細胞株AGSとMKN45ではMAP1LC3Aがメチル化かつ低発現であり、脱メチル化剤5-Aza-dc処理により発現が回復することを確認した。以上から、MAP1LC3Aはメチル化による発現制御されており、H. pylori感染が胃粘膜のメチル化誘発因子であることが示された。 2)ラット正常胃粘膜細胞を用いて、ノックダウンによるmap1lc3aの機能(増殖能、創傷治癒能、遊走能、浸潤能)解析を行った。その結果、コントロール細胞に比して、ノックダウン細胞が増殖能、創傷治癒能、遊走能、浸潤能のいずれも有意に増強されていた。 以上のことから、H.pylori感染はヒト胃粘膜上皮細胞のMAP1LC3A遺伝子のメチル化サイレンシングを誘発し、発癌につながる増殖能、創傷治癒能、遊走能、浸潤能を促進することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、オートファジーを誘導するH. pylori高病原性物質の同定を目指す。胃癌患者20人からH. pyloriを分離培養し、すでに分離培養できている非胃癌患者由来H. pyloriとともに、ラット正常胃粘膜細胞におけるオートファジー誘導能を測定する。さらに、各H. pyloriを全ゲノム解析し、オートファジー誘導と関連する高病原性物質を同定する。
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Causes of Carryover |
各実験が順調に進捗し、再実験や研究計画の練り直しが必要でなかったため当初の計画よりも使用額が少ない結果となりました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はH. pyloriの全ゲノム解析を予定しています。より正確なデータを得るため、解析数を増やすことに使用する計画です。
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