2015 Fiscal Year Research-status Report
レチノイド受容体遺伝子改変マウスを用いた新規肝癌治療法の開発
Project/Area Number |
15K19320
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
境 浩康 岐阜大学, 医学部附属病院, 助教 (40738259)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 肝細胞癌 / レチノイド / 核内受容体 / RXRα |
Outline of Annual Research Achievements |
リン酸化RXRαがin vivoの肝発癌過程に及ぼす影響について、RXRα遺伝子改変マウスを用いて検討を行った。始めに、肝発癌モデルとして一般的なDiethylnitrosamine (DEN)モデルを用いた。遺伝子改変マウスをリン酸化RXRα発現群と非発現群(対照群)の2群に分け、DEN(25 mg/kg)を生後15日でそれぞれに服腔内投与した後、月齢6カ月にて屠殺・解剖を行い、DENに対する発癌感受性を検討した。リン酸化RXRα発現群では、対照群と比較して総腫瘍数(リン酸化RXRα群vs対照群; 33.61±11.98 vs 8.14±7.66 個)や腫瘍最大径(リン酸化RXRα群vs対照群; 5.36±2.54 vs 2.86±1.21 mm)が有意に増加し、総腫瘍に占める肝細胞癌の割合も有意に増加した。さらに、リン酸化RXRα発現群の肝腫瘍では、対照群と比較して、アポトーシスの程度に差を認めなかったが、PCNA陽性細胞数の有意な増加を認め、細胞増殖に対して促進的に作用することが明らかとなった。加えて、両群の肝腫瘍における細胞周期制御蛋白の発現をウエスタンブロット法にて検討した結果、リン酸化RXRα発現群ではcyclin D1やcyclin D1の下流で細胞増殖調節に働くリン酸化Rb、及びPCNA蛋白の発現増加を認めた。さらに、cyclin D1の発現調節に関わるβ-catenin蛋白の発現増加も認めた。これらの事実から、リン酸化RXRαは、β-catenin/cyclin D1を介した増殖シグナルを亢進させることでDEN肝発癌に関与していることが明らかとなった。これらの結果は、リン酸化RXRαがin vivoの肝発癌過程においても大きく関与していることを示しており、新規肝発癌予防(治療)のターゲットとなる可能性を示唆する意義ある結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り研究が進み、研究目的達成に必要な意義ある結果が得られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、従来のDEN肝化学発癌モデルにおけるリン酸化RXRαの関与が明らかとなってきたが、将来的に、多様な背景肝を持ったヒト肝発癌の予防法や治療法の確立を目指すためには、よりヒトの肝発癌過程を反映した動物モデルでの検討が必要である。そこで今後は、ヒト肝発癌を反映した新規肝発癌モデルを確立し、肝腫瘍形成におけるリン酸化RXRαの影響について検討を行う。具体的には、近年増加傾向にある肥満や糖尿病を背景とした非アルコール性脂肪肝炎(NASH: nonalcoholic steatohepatitis)関連肝発癌モデルを作製し、リン酸化RXRαがNASH関連肝発癌に及ぼす影響について検討を行う。さらに、DEN肝発癌・新規肝発癌モデルに共通する普遍的な分子異常を同定し、ヒト臨床サンプルにフィードバックすることで新規予防法・治療法の分子標的となりうるか検討を行う。最終的には、本研究を新規肝癌予防法(治療法)の確立へと発展させたい。
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Causes of Carryover |
27年度は、新規肝発癌モデル(NASH関連肝発癌モデル)の作製に関しては準備段階であり、28年度における詳細な実験のために費用が増加することが予想される。そのため、28年度への繰り越しが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主な支出は実験動物の管理と試薬の購入が考えられる。 その他、研究成果発表のための論文掲載料及び国内外での学会参加旅費に充てられる。
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Research Products
(10 results)