2017 Fiscal Year Research-status Report
ケトン体が非アルコール性脂肪性肝疾患の進行に与える影響の解析
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15K19328
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
川野 佑輝 神戸大学, 医学部附属病院, その他 (80448175)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 小胞体ストレス / ケトン体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ケトン体(主にβヒドロキシ酪酸)が非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の病態進行へ与える影響を明らかにすることである。NAFLDではインスリン抵抗性が認められ、小胞体ストレスがその一因となっていると考えられている。平成27-28年度中に行った研究により、ヒト肝臓由来細胞株であるHepG2細胞とマウス肝臓由来細胞株であるHepa1c1c7細胞において、βヒドロキシ酪酸は小胞体ストレスを抑制することを明らかにした。また、Hepa1c1c7細胞ではβヒドロキシ酪酸はアポトーシスも抑制することを明らかにした。平成29年度中は、①βヒドロキシ酪酸による小胞体ストレス抑制効果をin vivoで確認すること、②βヒドロキシ酪酸の小胞体ストレス抑制メカニズムを解明することを目的として研究を行った。具体的には、①マウス(C57BL/6)にツニカマイシンを腹腔内投与して小胞体ストレスを誘導したところ、βヒドロキシ酪酸非投与群と比べて投与群では小胞体ストレスマーカーのタンパク発現(GRP78)が低下していることを明らかにした。また、②糖脂質代謝に深く関与しているサーチュイン遺伝子の一つであるSIRT1が肝細胞における小胞体ストレスを抑制しているとの報告があり、βヒドロキシ酪酸がSIRT1にあたえる影響を検討したが、βヒドロキシ酪酸はSIRT1のタンパク量や活性に影響を与えなかった。以上の解析により、主要なケトン体であるβヒドロキシ酪酸はSIRT1を介さず、in vitroだけでなくin vivoでも小胞体ストレスを抑制することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の状況は当初予想していたものとはやや異なっているが、新たな重要な知見も得られており、おおむね順調といえる。βヒドロキシ酪酸による小胞体ストレス抑制作用はin vitroおよびin vivoの両方で確認できた。そのメカニズムに関しては現在検証中だが、本年度中に明らかにする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27-29年度中の研究で、βヒドロキシ酪酸がSIRT1非依存性に小胞体ストレスを抑制することを明らかにした。一方、核内受容体も糖脂質代謝に深く関与しており、PPARαのアゴニストが小胞体ストレスを抑制するという報告もある。したがって、βヒドロキシ酪酸がPPARαの転写活性に与える影響を明らかにすることで、βヒドロキシ酪酸による小胞体ストレス抑制機構の解明に迫ろうと考えている。
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Causes of Carryover |
〔次年度使用額が生じた理由〕 平成27-29年度中の研究で、βヒドロキシ酪酸が小胞体ストレスを抑制することを明らかにしたが、そのメカニズムの解明のためにはさらなる検証が必要である。 〔使用計画〕 平成30年度も引き続き本研究を行い、本年度中には実験を終了して英文誌に論文を投稿予定である。したがって、実験費および投稿料として繰り越した研究費を使用する可能性がある。
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Research Products
(4 results)