2016 Fiscal Year Research-status Report
糖鎖修飾に着目した肝分化指向性ヒトiPS細胞株の早期同定システムの開発
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15K19329
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
板場 則子 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70457167)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 肝細胞分化誘導 |
Outline of Annual Research Achievements |
iPS細胞は、再生医療の重要な細胞源として期待されている。しかしながら、由来細胞が同一のiPS細胞同士でも分化指向性が異なることが報告されており、分化指向性を規定する因子の同定は再生医療の展開に重要であると考えられる。 本研究課題は、肝細胞分化指向性ヒトiPS細胞株ならびに肝細胞分化抵抗性ヒトiPS細胞株を使用し、肝細胞分化誘導時における糖鎖修飾に着目することで、ヒトiPS細胞の肝細胞分化指向性を決定する糖鎖修飾を明らかにし、肝細胞分化指向性iPS細胞の早期同定技術の開発を目的とする。 平成28年度は肝細胞分化指向性株ならびに抵抗性株の肝細胞分化誘導時のサンプルを用いて、糖鎖アレイ解析を実施した。分化指向性、抵抗性に関わらず分化誘導の経時変化に伴い、Galactose修飾が増加する傾向が認められた。この他、分化指向性株では、分化抵抗性株と比較し、シアル酸の糖鎖修飾が分化誘導の経時変化に伴い増加する傾向が認められた。 一方、分化誘導期間中では大きな変動を示さないが、分化誘導開始前の株間で高マンノース型糖鎖構造に差が認められ、分化指向性株では抵抗性株と比較し、高マンノース型糖鎖構造が多い傾向が認められた。分化指向性株の分化誘導期間中に増大を認めたシアル酸の糖鎖修飾は、分化誘導開始前では分化抵抗株との差は認められなかった。 今回の糖鎖アレイ解析の結果から、未分化状態での高マンノース型糖鎖構造、分化誘導に伴うシアル酸の糖鎖修飾の変動が肝細胞分化と関連があると推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の研究開始年度に、使用予定の肝細胞分化指向性iPS細胞株、分化抵抗性iPS細胞株の何れもが凍結保存状態の不良が生じ、即時に実験を開始できないことが影響し、大幅に実験計画に遅れが生じた。必要な細胞を揃え、肝細胞分化指向性iPS細胞株、分化抵抗性iPS細胞株を使用し、肝細胞分化誘導中の糖鎖アレイ解析を終えたが、開始年度の研究の遅れが影響し、当初の計画よりもやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
各糖鎖構造に対応する糖転移酵素遺伝子の抽出を行い、抽出した各糖転移酵素遺伝子の遺伝子発現を、3 ステップの肝細胞分化誘導の各段階および未分化時でリアルタイムPCR により解析する。糖鎖アレイ解析で変動したレクチンと対応する糖転移酵素が合致した糖鎖構造を選択し、選択した糖鎖構造に対応する蛍光標識レクチンを使用して肝細胞分化指向性iPS細胞株の推定を行い、これを実際の肝細胞分化誘導系にて検証する。
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Causes of Carryover |
研究計画に遅れが生じ、年度内にすべての研究計画を終えることができなかった。計画の遅延分が次年度使用額に相当する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
すでに収集しているサンプルを使用して、糖転移酵素の遺伝子発現解析を実施する。また、蛍光標識レクチンを使用して、肝細胞分化指向性iPS細胞株の推定とその検証を行う。
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