2015 Fiscal Year Research-status Report
高脂肪食とクローン病感受性遺伝子LRRK2の相互作用によるIBD発症機序の解明
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15K19347
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
川上 文貴 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (50511896)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 炎症性腸疾患 / 高脂肪食 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の解析では、野生型マウスによるDSS腸炎モデルを用いて高脂肪食摂取の影響を解析した。体重測定や糞便の性状を観察し、腸炎の程度をスコア化した。一週間後に解剖して腸の長さを測定した後、腸管の組織切片を作成し、HE染色およびPAS染色により腸管粘膜の脱落など腸炎の程度と粘液分泌の程度を比較した。さらに、通常食と高脂肪食を摂取させたマウスの腸管におけるLRRK2のmRNA発現量をreal time PCR法により比較した。通常食あるいは高脂肪食を摂取させたマウスにDSSを投与した結果、通常食群において顕著な体重減少が見られた。便の性状に関しては、通常食群と高脂肪食群ともにDSS投与開始5日目から血便が見られ、中でも通常食群で下痢が顕著に引き起こされた。さらに、解剖後、腸の長さを測定した結果、通常食群と高脂肪食群の両群においてDSS投与群では、コントロール群と比較して大腸の短縮が認められ、高脂肪食群の方がより短くなる傾向があった。組織切片を用いてHE染色をした結果、通常食群と高脂肪食群の両群においてDSS投与により粘膜への細胞浸潤が確認された。DSS投与通常食群では主に粘膜固有層への細胞浸潤が認められたのに対して、DSS投与高脂肪食群では、粘膜固有層のみならず粘膜下組織へも細胞浸潤が認められた。次に、PAS染色を行った結果、通常食群においてコントロール群に比べDSS投与群では粘液の増加が認められた。一方、高脂肪食群では、DSS投与による粘液の増加は認められなかった。次に、腸管組織におけるLRRK2のmRNA発現を解析したところ、胃、空腸、回腸、大腸の全組織において高脂肪食群ではLRRK2の発現が低下していた。以上のことから、高脂肪食により粘膜傷害時の粘液産生の低下とLRRK2の発現低下が腸管粘膜防御機構の低下に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、まず野生型マウスにおいて、全消化管領域におけるLRRK2の発現分布の解析を行い、LRRK2は胃、空腸、回腸、大腸に発現していることを明らかにできた。さらに正常マウスを用いてデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)による腸炎モデルを作成できた。このDSS腸炎モデルマウスを用いて、1カ月間の高脂肪食摂取の影響を解析することができたため、本年度の計画はほぼ当初の予定通り進行した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の計画において、LRRK2ノックアウトマウスを用いてDSSによる腸炎の影響について解析する予定である。さらに、当初の計画通り、TALENによるゲノム編集技術を用いてLRRK2のクローン病高リスクアリルLRRK2-M2397と低リスクアリルLRRK2-T2397のそれぞれを有する細胞株を作成し、それぞれのシグナル伝達経路の差異を解析する予定である。
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Causes of Carryover |
マウスを使用する実験において、動物実験基準3Rの観点から使用するマウスの匹数を可能な限り減らすよう実験手順を工夫したため、当初予定よりも少ない匹数のマウスの購入で済んだ。加えて、mRNAの定量解析において、1サンプルあたりの試薬量を半分になるようスケールダウンして実施したため、使用する試薬量を節約できたため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の予算と合わせて、必要な消耗品、特に免疫組織学的な解析に必要な抗体等の購入に充当する予定である。
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[Journal Article] Selective enhancement of hypoxic cell killing by tempol-regulated suicide gene expression.2015
Author(s)
4.Kagiya G, Ogawa R, Choudhuri R, Cook JA, Hatashita M, Tanaka Y, Koda K, Yamashita K, Kubo M, Kawakami F, Mitchell JB.
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Journal Title
Oncol Rep.
Volume: 34
Pages: 1065-1073
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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