2016 Fiscal Year Research-status Report
高脂肪食とクローン病感受性遺伝子LRRK2の相互作用によるIBD発症機序の解明
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15K19347
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
川上 文貴 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (50511896)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 炎症性腸疾患 / 高脂肪食 / LRRK2 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、12週齢の雄性C57BL/6J野生型マウス(WT)とLRRK2欠損マウス(LRRK2-KO)に2%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)水溶液を自由飲水させて腸炎の程度を比較した。DSS投与後の体重測定や糞便の性状を観察し病態スコアをつけて炎症度合いを比較した。さらに、腸管の組織切片を作成し、HE染色により柔毛の脱落や浸潤細胞の計測など腸炎の程度を組織学的に比較した。また、WTマウスを用いて腸炎誘発によるLRRK2のmRNA発現量の変動や、DSS腸炎を誘発させたWTとLRRK2-KOマウスによる炎症性サイトカインのmRNA発現量の比較をreal time PCR法により解析した。12週齢マウスを用いてDSS投与後7日目までの病態スコアを比較したところ、WTでは6.3ポイント、LRRK2-KOでは9.7ポイントとなり日を増すごとにスコアに差が見られ、LRRK2-KOマウスの病態の方が増悪化することが分かった。HE染色による組織学的解析により、LRRK2-KOマウスの腸管で細胞浸潤が多く認められた。次に炎症性サイトカインの発現をReal-time PCRで解析したところ、DSS投与によりLRRK2-KOマウスでは炎症性サイトカインであるTNF-αや抗体産生を誘導するサイトカインであるIL-6の発現がWTマウスより上昇していた。本年度の解析により、病態スコアやHE染色による細胞浸潤などの組織学的解析結果から、KOマウスの方がWTマウスと比較してDSSによって誘導される大腸炎に対する感受性が高くなると考えられた。またReal-time-PCRを用いた炎症性サイトカインの発現解析の結果からKOマウスでは炎症や免疫応答がより活性化しており、LRRK2の欠損は消化管粘膜バリア機能を低下させ、IBDの症状を増悪させる可能性があるのではないかと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、野生型マウスとLRRK2ノックアウトマウスを用いてデキストランナトリウム(DSS)による大腸炎について組織学的な比較検討や、リアルタイムPCRによる各種炎症性サイトカインの発現レベルも解析できたため、本年度の計画はほぼ当初の予定通り進行した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究計画においては、正常マウスの消化管におけるLRRK2タンパク質の発現をウエスタンブロッティングにより解析する予定である。また、LRRK2タンパク質の発現が認められた消化管領域において、LRRK2発現細胞をフローサイトメーターにより解析する予定である。さらに、前年度までの解析で、高脂肪食摂取あるいはLRRK2の機能損失はDSSによる大腸炎を悪化させることが明らかになったため、LRRK2の機能損失と高脂肪食摂取の相互作用による大腸炎の増悪化を明らかにするため、次年度は野生型マウスとLRRK2ノックアウトマウスに通常食と高脂肪食をそれぞれ与え、その後薬剤により大腸炎を誘発させて、腸炎の程度を比較検討する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度使用したLRRK2ノックアウトマウスは、自家繁殖により得られたマウスを使用したため、マウスの購入費用が少なく済んだ。また、組織化学染色やウエスタンブロッティングに使用した抗体量やリアルタイムPCR法に用いた各試薬量を節約したため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の予算と合わせて、ウエスタンブロッティングに使用する抗体の購入費用に使用する予定である。
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