2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K19369
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安部 元 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (50746576)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マクロファージ / 心線維化 / 心不全 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
心不全には心筋収縮能低下を原因とするものに加えて心線維化などにより心臓の拡張能が障害されることを原因とする病態(拡張障害)が存在する。心臓拡張障害は独立した生命予後増悪因子であるにも関わらず現在でも有効な治療法はなくその生命予後はほとんど改善していない。心臓の線維化は心肥大などの心筋症や心筋梗塞後に認められる。線維化は筋線維芽細胞と呼ばれる線維芽細胞が活性化して分化した細胞によって引き起こされる。筋線維芽細胞は本来ダメージを受けた心筋の修復のために出現するが、最終的には逆に心臓線維化として心機能悪化の独立因子となる。しかし、その病態のメカニズムは現在も殆ど解明が進んでいない。つまり心臓線維芽細胞の活性化メカニズムは依然不明である。 近年、心臓リモデリングの病態にマクロファージを中心とした炎症シグナルの活性化が関わることが判ってきたが、心臓の線維化進展および退縮におけるマクロファージの役割については未だ明らかにされていない。 その解決方法として私は心線維化を一度誘導した後に心線維化を軽減させるマウス病態モデルの樹立に成功した。このモデルでは、心線維化進展時にM1マクロファージ、線維化退縮時にM2マクロファージがそれぞれ心筋組織に集積することを確認した。我々はM1, M2の集積が心臓リモデリングの単なる結果ではなく、その病態形成に深く関わることを確認している。心臓線維芽細胞の活性化、および不活性化のプロセスにおいて心筋細胞に集積する極性の異なるマクロファージを解析することで、マクロファージ由来の心線維芽細胞活性化制御因子を同定することを目的とする。まず、心線維化進展時のM1の役割に注目して解析を行い、M1マクロファージの分泌する心臓線維化改善の役割をもつ心保護因子の絞り込みを現在行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
心臓マクロファージにおいてHIF-1αが介在する役割に着目することにより、心臓のM1マクロファージが心臓リモデリング過程において心筋保護的に働くこと、そして心臓圧負荷後M1マクロファージが心筋組織の低酸素領域に浸潤し、その機能にHypoxia inducible factor 1α(HIF-1α)が必須であることを明らかになってきている。 これらの検討から得られた結果をもとに、心臓リモデリングにおいて炎症プロセスが果たす機能の解明を行うべく、更なる検討を行っている。心不全を起こした心筋組織に集積するM1マクロファージをフローサイトメトリーにより無菌的に採取し、RNAシークエンスを用いて網羅的解析を行った。下記の3つの条件を同時に満たす因子の絞り込みを行うことにより、M1マクロファージ由来心臓線維芽細胞活性化抑制因子を探索した。 ① 心筋組織に集積するM1マクロファージにおいてレジデントマクロファージに比して発現が上昇する(RNAシークエンス法)、② 低酸素環境下において、HIF-1α依存的に発現が誘導される (RNAシークエンス法)、③ TGFβによるマウス心臓線維芽細胞活性化の系において活性化抑制作用をもつ。それらの検討から低酸素培養下のM1マクロファージから心臓線維芽細胞活性化制御因子が分泌されることを見出した。さらなる解析により、M1マクロファージの分泌するHIF-1α依存的心保護因子の詳細なメカニズムを明らかにする予定である。 これらのことから、今のところ治療法のない心臓線維化の改善に対する治療への新たな方法の開発につなげていきたいと考えている。これまでの結果においては当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、心線維化形成期のみならず、心線維化退縮モデルにおいて心筋組織に集積するマクロファージについての解析を行う。TAC解除後の心線維化退縮期において心筋組織に集積するM2マクロファージが心線維化退縮プロセスに関与しているとの仮説を構築し、その詳細な役割を解析する。M2マクロファージの活性化においてHIF-2αが重要な役割を果たすことを明らかにしたことに基づき、以降の解析を①in vivo、②in vitroの両面から行う予定である。 ①in vivoの解析においてはM2マクロファージの機能を減弱させたマウスである、STAT6欠失マウス、またはマクロファージ特異的HIF-2α欠失マウス(既に樹立済み)を用いて、圧負荷解除後の心線維化退縮時のM2マクロファージの役割の解析を行う。クロドロネートを用いて心不全退縮期に集積するM2マクロファージを減少させる手法も用いてM2マクロファージの機能を解析する。 ②in vitroの解析においては圧負荷解除後の心筋組織に集積するM2マクロファージをFACSを用いて無菌的採取し、RNAシークエンスを行うことで遺伝子プロファイルを解析する。さらに、候補遺伝子の絞り込みのために、STAT6欠失マウス、またはマクロファージ特異的HIF-2α欠失マウスから腹腔マクロファージを採取し、その遺伝子発現の解析を野生型マウスの腹腔マクロファージとの比較を行う。それらのデータの解析により、M2マクロファージの性状解析とその後の不活化因子の探索につなげたいと考えている。マクロファージと線維芽細胞の細胞間相互作用についての新しい知見を得ることができると考えている。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] HIF-1α-PDK1 axis induced active glycolysis plays an essential role in macrophage migratory capacity2016
Author(s)
Hiroaki , Norihiko T, Takayuki I, Yuki S, Kurara H, Masaki W, Hidenobu M, Yoshifumi Y, Masayuki M, Dana J, Hyunsung C, Jung-whan K, Masataka A, Andrew C, Hajime A, Katsura S, Katsuhiro K, Manami K, Keimon S, Nobuhito G, Randall S J, Ichiro M, Ryozo N, and Issei K
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Journal Title
Nature Communications
Volume: In press
Pages: In press
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] HIF-1α - PDK1 axis induced active glycolysis plays an essential role in macrophage migratory capacity2016
Author(s)
Takeda N, Semba H, Isagawa T, Abe H, Sugiura Y, Honda K, Wake M, Kim JW, Soma K, Koyama K, Katoh M, Johnson RS, Manabe I, Nagai R and Komuro I
Organizer
Keystone symposium; Immunometabolism in immune function and inflammatory disease
Place of Presentation
Banff (Canada)
Year and Date
2016-02-24 – 2016-02-24
Int'l Joint Research
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[Presentation] HIF-1α - Pdk1 axis induced metabolic reprogramming critically regulates macrophage function in inflammatory conditions2016
Author(s)
Semba H, Takeda N, Isagawa T, Wake M, Abe H, Soma K, Koyama K, Katoh M, Manabe I, Nagai R, Takeshi Yamashita and Komuro I
Organizer
第80回日本循環器学会学術集会
Place of Presentation
仙台国際センター(宮城県・仙台)
Year and Date
2016-02-13 – 2016-02-13
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