2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K19409
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
丹藤 由希子 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (70596212)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 組織幹細胞 / 肺細胞 / 細胞外環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,ヒト肺組織幹細胞(AEPCs:Alveolar rpithelial progenitor cells)を肺胞上皮細胞に分化させる細胞外環境(=組織幹細胞ニッチ)を同定し,疾患肺の組織幹細胞ニッチがAEPCsの振る舞いに及ぼす影響を明らかにすることである. 平成27年度は,MPC-co-BMAコートした培養ウェル内でAEPCsがスフィアを形成し,肺胞上皮細胞マーカーであるSP-Cの発現が上昇する現象を詳細に解析した.スフィアを固定して凍結切片を作成し,免疫組織化学でSP-Cの発現を調べると,SP-C強陽性細胞は主にスフィアの周辺部に存在し,スフィア内部の細胞はSP-C弱幼生であった.また,培養ウェル内で形成されたスフィアは継時的に大きくなっていった.そこで,スフィア内の細胞が増殖していると推測し,免疫組織化学でKi67の発現を調べたところ,Ki67陽性細胞はスフィア周辺部の一部の細胞に限局していた.よって,増殖している細胞がSP-C強陽性であると推測された.一方で,Ki67は細胞周期に入らず休止期にある細胞では発現しないため,スフィア内部のKi67陰性細胞は細胞周期から離脱して休止期に入ったと考えられた.培地の血清濃度を減少させたところ,スフィア周辺部のKi67陽性細胞の数は減少した.またこの時,スフィア周辺部のSP-C強陽性細胞の数も減少した.以上より,AEPCsをMPC-co-BMAコートしたウェルで培養すると,スフィア周辺部の細胞はSP-C強陽性でKi67陽性,スフィア内部の細胞はSP-C弱陽性でKi67陰性と極性が生じることが分かった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度に予定していたAEPCsスフィアのマイクロアレイ解析にまだ着手していないため,計画よりも遅れていると判断した.しかし,スフィア形成の継時解析やSP-CのみならずKi67をマーカーとした細胞特性の検出など,マイクロアレイを行うための事前データを予定よりも多く集めることが出来た.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に得たAEPCsスフィアの解析データをもとに,スフィア形成前・形成直後・形成数日後のAEPCsを回収してマイクロアレイを行い,各段階で発現している遺伝子を比較解析する.前年度の解析で,スフィアを形成するとAEPCはKi67陰性,すなわち休止期に入ることが確認された.細胞が休止期に入るメカニズムの詳細はほとんど明らかでなく,本培養系を用いて新たなメカニズムを解明できる可能性がある.そこで,当初の目的のSP-Cの発現制御に加えて休止期への進入に関わる遺伝子の発現にも焦点をあて,解析を行う.
|
Causes of Carryover |
平成27年度に予定していたマイクロアレイ解析の実施が次年度になったため.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
マイクロアレイ解析を平成28年度に実施しするための研究費として平成28年度分と併せて使用する.また,現在データ解析に使用しているノートパソコンの調子が悪く,研究に支障をきたす恐れがあるため,平成28年度の物品費で購入する予定である.
|