Outline of Annual Research Achievements |
COPDの増悪は肺機能の悪化とQOLの低下に関連し,予後に影響を与える.増悪の原因は主に細菌,ウイルス感染であるが,従来の喀痰培養や抗原,抗体検査では,原因微生物を同定しえない場合が多く,臨床的な増悪の危険因子も明らかになっていない.本研究室で開発された喀痰半定量PCR(HIRA-TAN法)はヒト細胞由来DNAをコントロールとし,多数の気道の病原微生物を同時に,半定量的に評価する方法である.今回COPD患者の喀痰を用い,このPCR法で25種の病原微生物の検出を試み,COPD増悪因子の検索を行った. COPD急性増悪での入院症例を増悪群,COPD外来通院症例を安定群にエントリーし,喀痰検査(培養,PCR),血液検査(CRP,プロカルシトニン,Chlamydophila IgG,IgA,バイオマーカー用血清を含む),呼吸機能検査,胸部CTを施行,また各種質問票(CATスコア,FSSGスコア,誤嚥リスク質問票)を用いて評価を行った. 結果,安定群に30例,増悪群に24例エントリーされた.喀痰培養で病原微生物を検出した例は,安定群で6.6%,増悪群で37.5%であったのに対し,PCRでは,安定群で40%,増悪群で70.8%と高い率で病原微生物を検出し,有用性が示唆された.PCRでの検出菌は,H.Influenza,M.Cataarrhalis,S.Pneumonia等が多く,COPD患者の定着菌として妥当な結果であった.現時点で,菌検出の有無,菌種と,増悪の頻度には明らかな相関を指摘なかった.血清TNF-alpha,adiponectin,E-cadherin,MMP-7などバイオマーカーを測定したが,増悪との関連は指摘できなかった. エントリー時のCATスコアとFSSG,誤嚥リスク,CTでの気腫化の程度,また,CATスコアの変動と気腫化の程度,増悪頻度と誤嚥リスクはそれぞれ相関した.
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