2015 Fiscal Year Research-status Report
非小細胞肺癌における癌関連肺線維芽細胞による癌進展のメカニズムの解明
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15K19430
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
米尼万 吐拉甫 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), PD (00739534)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | CAF / 非小細胞肺癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌間質量や癌間質内の線維芽細胞の増殖能の高さが予後と強く相関し、癌間質線維芽細胞の存在様式と癌悪性度の密接な関連性が報告され癌間質の制御の重要性が指摘され始めている。癌間質の主な構成成分である線維芽細胞は、癌関連肺線維芽細胞 (CAF: Cancer-associated fibroblast)と称され、癌治療の新たな標的として注目を集めているが肺癌におけるCAFの解明は不十分である。 CAFは、本来の肺臓器固有の線維芽細胞が、癌細胞の増殖や進展により変化し、活性化された筋線維芽細胞の特性を持つと考えられている。癌細胞は、癌塊のなかで線維芽細胞を筋線維芽細胞に変化させ、後にその癌筋線維芽細胞よりの増殖促進シグナルを受け、より悪性の癌細胞に変化させている。つまり、癌細胞と線維芽細胞は、癌内で共に進化していると考えられ、癌細胞は、間質組織との密接な連携のもとにはじめて生存可能であり、癌細胞-癌間質相互作用は、まだまだこれから発展する分野である。今後さらに癌間質の各種細胞間の相互作用を理解することにより、従来とは、全く異なった新たな治療戦略や診断法に発展する可能性が高い。 本研究のゴールはCAFの機能解析及びより効果的なCAFを標的とする薬剤の開発につながる新たな知見の創出である。肺癌組織中のCAFの生物学的特性を解明し、CAFを標的とした肺癌治療法を新しい領域からアプローチすることを本研究の主目的とする。CAFを標的とした分子標的治療法の確立に基盤形成をなす研究である。将来的に肺癌患者の実地治療により有効な治療効果が期待され癌患者の生命予後の改善につなる可能性が十分に期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
非小細胞肺癌の手術症例より、手術肺検体から得られる癌組織よりex vivoでの肺線維芽細胞分離培養を行い非癌部の正常肺線維芽細胞をコントロールとしてCAFの生理機能の比較検討を完了した。CAFの生理活性機能を遊走能、コラーゲンゲル収縮能が亢進していることを確認した。 第4期科学技術計画(ライフイノベーション)に記述されている方針に基づき研究協力施設の理化学研究所においてCAGE解析を行い、CAFの転写活性の網羅的解析の結果からCAFで高発現する特異的なマーカーの候補因子を同定しCAFの生理活性機能との関連検討を行っている。我々は中でもCAFで特に発現が更新していたCol11a1,SPARC,SERPINEB9,GPCR5B,ERK5に着目してColl11a1とGPCR5B,SPRCに関して肺がん手術検体の腫瘍組織でのWestern-Blotting及び免疫染色でたんぱくレベルでも発現が更新していることを確認した。現在、症例増やしてこれらのCAF候補因子の高発現を免疫染色で確認して染色程度をH-scoreによる定量化を行い予後や悪性度、再発期間などの臨床背景との相関を検討しCAFの臨床バイオマーカーとしての意義を確認していく予定である。 しかし、CAFの候補因子Col11a1,SPARC,SERPINEB9,GPCR5B,ERK5に関して中でもERK5の強制発現を正常の肺線維芽細胞に高発現させるためにレンチウイルスで強制発現をさせたがCAFの生理機能活性に近ずく変化、すなわち遊走能、コラーゲンゲル収縮能が亢進を認めなかった。別の手法を用いてLipofectionやElectropolationによるERK5 Vectorの挿入を試みたがTransfection効率が悪く失敗に終わっている状況である。よって、現在、CAF特異的制御因子を正常肺線維芽細胞(HFL-1)に強制発現させて肺癌細胞と共移植させてCAFの発現する特異的制御因子による癌進展の機序をin viovo検証する次のStepの前準備段階まで到達していない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、ERK5以外の別のCAF特異的制御因子(Col11a1,SPARC,SERPINEB9,GPCR5B)に着目し、正常肺線維芽細胞(HFL-1)に強制発現させるために再度レンチウイルスでの強制発現系を用いるのと同時に、別の手法を用いて構築していく予定である。
もし、免疫不全マウスへの癌細胞との混合移植モデルを用いた研究を行いCAFの癌浸潤及び促進、転移能をin vivoで検証する段階へ進まなかった場合は現行の組織免疫染色を症例を増やして発現を確認して最終的に臨床背景との相関を検討し、まず、この時点で論文化を行い投稿する。
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