2015 Fiscal Year Research-status Report
ウィルス感染が誘導するステロイド抵抗性気管支喘息のメカニズム解明とその制御法開発
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15K19431
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
芦野 滋 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (10507221)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 気管支喘息 / ウィルス感染 / Th1 / Th17 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、マウスモデルを用いて、気管支喘息の病態がウィルス感染状態において重篤化するメカニズムを、免疫細胞の一種であるヘルパーT (Th) 細胞の機能にフォーカスを当てて解明することを目的としている。具体的には、一般的な気管支喘息マウスの肺に、種々のウィルスを感染させた際に、あるいはウィルス感染状態を構築できるよう、double stranded RNAを模倣する人工試薬 poly I:Cを投与した際に、どのようなサイトカインが肺内で産生されて気道炎症の質的変化を招くかという点について着目している。また、肺内のTh細胞を中心とする免疫反応がいかにしてステロイド抵抗性を獲得するのかという観点で、喘息病態の変遷過程を明らかにすることも目標としている。 平成27年度は、ウィルス感染を想定してpoly I:Cを喘息マウスに投与することで、重症喘息モデルの開発に成功した。呼吸機能解析装置を用いて、気道過敏性 (AHR) を測定したところ、通常の喘息モデルのAHRに比べて、polyI:C 投与喘息モデルのAHRは有意に亢進し重症化したことがわかった。さらに、気管支肺胞洗浄 (BAL) を行って肺への浸潤細胞を解析した結果、通常の喘息では好酸球浸潤性の気道炎症であったのに対し、polyI:C 投与した喘息モデルでは、好中球の浸潤を伴った気道炎症に変化することが明らかとなった。さらに、BALで得られた上清中のサイトカインを測定すると通常の喘息モデルではTh2サイトカインが主体だったが、polyI:C投与喘息モデルではTh1/Th17免疫反応に関係するサイトカインの上昇が確認された。現在、このウィルス成分polyI:Cによって誘導される気道炎症の質的変化に伴って、喘息病態がどの程度ステロイド抵抗性に変化しているかをTh1/Th17に関係する分子群に注目して解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
喘息基質を有する患者がウィルス感染を起こす状況を想定して、一般的にステロイド感受性のTh2細胞依存的な気管支喘息モデル (アレルゲンovalbumin (OVA) + Th2アジュバントAlumで感作後にOVAを吸入させるモデル) にウィルス成分poly I:Cを投与したところ、AHRが上昇し、肺への好中球浸潤を特徴とする気道炎症が確認され、臨床像とリンクするモデルを作製できた。肺内のサイトカインパターンにも変化が見られ、気道炎症の質的変化が認められた。Th1やTh17に関するサイトカイン濃度が肺内で上昇したことからTh細胞の機能がTh2からTh1/Th17へシフトしたことが示唆された。 以上より、本研究課題で必要な重症喘息モデルを作製するプロトコールが確立され、次年度の解析に大いに役立つと期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で確立された喘息重症化モデルを用いて、Th細胞機能変遷の解析を行う。また、Th細胞機能をサポートする樹状細胞(DC)の機能も並行して解析していく。さらに、ステロイド抵抗性を獲得することを確認したうえで、難治化に関わる分子群がTh細胞内またはDC内に誘導されているか、あるいは気道上皮などの肺構成細胞で発現するかどうかを解析する。肺内でTSLP、IL-25、IL-33なのような重症喘息に関わるサイトカインが産生され得るかも確認し、各種中和抗体などを用いて、気管支喘息難治化にどのように関わっているかも解析する。
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Causes of Carryover |
本研究では、難治性気管支喘息モデルを開発するために、より多くのサイトカイン測定用ELISA kit、ヘルパーT細胞解析のための試薬、実験マウスを購入しなければならなかったが、条件検討が比較的上手くいき、当初の予想よりも低額で初年度を終えたため。また、難治化に関わる分子群の解析試薬はいまだ未購入であるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に予定している研究で、病態の難治化メカニズムを証明するために、更なる条件検討が必要である。その際、前年度以上に、中和抗体、リコンビナントサイトカイン等が必要となるため、それら試薬代に使用する予定である。
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