2015 Fiscal Year Research-status Report
ミクロダイセクションによる間質性肺炎の早期線維化巣からの病態関連因子の抽出と応用
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15K19434
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
漆山 博和 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20725303)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 肺線維症 / 通常型間質性肺炎 / 器質化肺炎 / ミクロダイセクション / 質量分析 / キャンスタチン |
Outline of Annual Research Achievements |
UIPおよびOPと病理診断されたヒト肺組織を用い、両者の早期線維化巣のみをミクロダイセクションにて抽出し、質量分析の手法を用いて発現・沈着しているタンパクの解析を行った。UIPの早期線維化巣はOPのそれと比較して筋細胞に由来するタンパクが多く発現・沈着しており、形態学的な特徴と合致していた。これまでに報告のない、いくつかの候補タンパクを見出し、免疫染色を用いたヒト組織での解析、培養細胞を用いたタンパクの発現の確認および解析、siRNAを用いた発現ノックダウンなどの手法を用いて、肺線維化における機能解析などを今後実施していく予定である。 UIPの早期線維化巣のみに沈着し、OPの早期線維化巣には沈着を認めないIV型コラーゲンは、質量分析においても同様の所見が確認された。IV型コラーゲンの発現・沈着と間質性肺炎の病態については、これまで集積してきた結果も含めて学術誌(Laboratory Investigation)に投稿し、掲載された。 IV型コラーゲンalpha 2鎖のNC端領域は血管新生阻害作用を有し、キャンスタチンと呼ばれているが、免疫染色によりUIPの早期線維化巣にはキャンスタチンが沈着しているが、OPのそれには沈着していないことを見出した。培養肺線維芽細胞はTGF-beta1刺激により筋線維芽細胞化するとキャンスタチンを産生した。またリコンビナントキャンスタチンを精製し、肺線維芽細胞に対する機能を解析した。これらの所見をまとめて学術誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IV型コラーゲンやキャンスタチンの間質性肺炎の早期線維化巣における発現・沈着やその予想される機能についての解析は、当初の予定通りか予定よりやや早く進行している。一方で、ミクロダイセクションを用いた間質性肺炎の早期線維化巣における新規タンパクの発見およびその機能解析については、ミクロダイセクションにより解析できるタンパクが想定より少量であることや既報のタンパクも多いため、候補タンパクの選定が難しく、当初の予定よりは遅れている。全体としてはおおむね予定通りに進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス肺にて高発現するアデノウイルスベクターを用いてキャンスタチンや、質量分析にて得られた候補タンパクをマウス肺にて発現調節を行い、肺線維化における機能について解析を進めていく。加えて病的線維化の主因の一つである過剰な線維芽細胞の増殖を抑制する目的で、肺以外の領域で線維芽細胞増殖抑制作用を有するような化合物が肺線維芽細胞でも同様の作用を有するか検討していく。
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Causes of Carryover |
ミクロダイセクションを用いた間質性肺炎の早期線維化巣に沈着する新規タンパク質の解析において、当初想定されていたよりも候補となるタンパクが少なく、また既報にあるものが多かったため、想定よりも候補タンパクの検索に時間を要し、候補タンパクの解析に必要な、免疫染色用抗体やPCR試薬、siRNA試薬などの購入が想定より少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
候補タンパクの同定を進め、免疫染色用抗体やPCR試薬、siRNA試薬などの購入費用とする。
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