2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K19442
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上田 浩平 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任研究員 (80735697)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 夜間高血圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
夜間高血圧の発症機序を同定すべく、共同研究者より Cry-KOマウスの供与を受け、腎臓で活性化していると推測されるナトリウム輸送関連膜蛋白の活性を蛋白膜発現量により個々に解析したところ、予想に反し、計画時の予備実験で判明していたNCCの発現低下以外に、活性化した膜蛋白を同定できなかった。さらにこの実験動物の血圧が上昇するのは暗条件下に限られ、明条件下では分単位で速やかに血圧が正常化することが判明した。この結果から、この疾患動物モデルは、高血圧発症機序として腎臓による塩分再吸収よりも、血管収縮性の神経性調節の亢進が優位と考えられた。よってこの実験動物では夜間高血圧の腎機序を解析することは困難との結論に至り、疾患動物モデルの変更が必要と判断した。そこで我々が保持する腎尿細管特異的11βHSD2ノックアウトマウス(以下KSP-Hsd11b2KO)を夜間高血圧のモデルとして用いることとした。この疾患モデル動物はCry-KOマウスと同様に、覚醒時に限らず睡眠時も一貫して野生型比較対照群に比べ血圧が高いことから、夜間高血圧のモデルと考えることができた。また減塩食への変更により速やかに降圧されたことから、純粋な腎機序に由来する夜間高血圧と考えられ目的に沿う動物モデルと考えられた。夜間高血圧の腎機序を明らかにすべく、腎臓のナトリウム輸送関連膜蛋白の活性を解析したところ、遠位ネフロンで主要なナトリウム輸送体であるAの活性は変化していないにもかかわらず、B, Cが活性化していた。KSP-Hsd11b2KOにBの阻害剤を投与したところ、Cの抑制因子が活性化されたこともあり、速やかに高血圧は改善した。一方でCの抑制因子のみを投与したところ、高血圧は改善しなかったことから、Bの活性化が、Cの活性化をも惹起する重要な高血圧発症機序であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画よりも本研究の目的に適切な疾患動物モデルへの変更に伴い、計画変更はよぎなくされたものの研究は順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
KSP-Hsd11b2KOの腎臓におけるナトリウム輸送体Cの活性化機構の詳細を明らかにする。具体的には、Cを活性化する核内受容体の同定、その阻害剤による高血圧改善の確認、本来11βHSD2によって分解されるはずのコルチコステロンに対する依存性をコルチコステロン産生阻害剤を用いて確認し、治療薬候補としての可能性を探る。
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Causes of Carryover |
実験に使用する疾患モデル動物の変更に伴い、一部の実験を翌年度に行うこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
KSP-Hsd11b2ノックアウトマウスの腎臓におけるナトリウム輸送体の活性化経路のさらに詳細な解析を行う。このため動物実験における餌・薬剤費等、解析用の試薬物品費等として使用する。
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