2015 Fiscal Year Research-status Report
シナカルセト塩酸塩による過形成副甲状腺への退縮作用の解析
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15K19469
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
巽 亮子 東海大学, 医学部, 助教 (60631819)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 二次性副甲状腺機能亢進症 / シナカルセト塩酸塩 / 細胞周期 |
Outline of Annual Research Achievements |
副甲状腺細胞の静止期(G0期)からG1期への移行に、シナカルセト塩酸塩が作用する可能性について検討した。 今年度新たに採集されたシナカルセト塩酸塩投与患者と非投与患者の副甲状腺組織切片に対して、G0期マーカーのp27KipとG1期マーカーのc-mycに対する免疫染色を行い、シナカルセト投与群の副甲状腺においてp27Kipの発現低下とc-mycの発現上昇を確認した。 またシナカルセト塩酸塩非投与患者より摘出された副甲状腺組織より副甲状腺実質細胞を回収してスフェロイド(細胞塊)を形成させ数日維持したものに対し、培地にシナカルセト塩酸塩を添加して数日後に固定・包埋して薄切標本を作製し、細胞分裂頻度、アポトーシス頻度、p27Kip発現、c-myc発現について測定したところ、シナカルセト塩酸塩を添加された細胞塊においては非添加の細胞塊と比較して、p27Kip発現が低下する一方でc-myc発現は増加していたが、細胞分裂頻度、アポトーシス頻度に有意な差は見られなかった。この結果より、シナカルセト塩酸塩の作用は、G0期の副甲状腺細胞をG1期へ移行させる効果を持つものの、それだけでは細胞周期を回し始めるのには十分でなく、細胞分裂に至らせる他の要因がある可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、副甲状腺摘出術で得られる二次性副甲状腺機能亢進症の検体は、シナカルセト塩酸塩などのカルシミメティクスによる治療が行われていたものがほとんどで、シナカルセト塩酸塩を投与されていない患者の検体は非常に入手され難くなっている。このため、十分な対照用検体が得られず、実験結果の評価ができない状況であったが、今年になって数例の対象検体を入手したので、急ぎ実験結果の確認を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の培養細胞を用いた研究結果からシナカルセト塩酸塩の作用だけでは副甲状腺細胞の細胞分裂には至らず、細胞周期を開始させる他の要因の関与の可能性が浮上したため、今後はこの要因の検討も、当初の実験計画の遂行と併せて行う予定である。具体的には実際に細胞分裂頻度の上昇しているシナカルセト塩酸塩投与/非投与患者より摘出された副甲状腺組織、および細胞分裂の停止している培養下の細胞塊(シナカルセト添加/非添加)から抽出されたmRNAを用いて、マイクロアレイ等による網羅的な遺伝子発現の検索と比較から候補となる因子の絞込みを行う予定である。
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Causes of Carryover |
現在、副甲状腺摘出術で得られる二次性副甲状腺機能亢進症の検体は、シナカルセト塩酸塩などのカルシミメティクスによる治療が行われていたものがほとんどで、シナカルセト塩酸塩が投与されていない患者の検体は非常に入手され難くなっている。このため、十分な対照用検体が得られず、実験結果の評価ができない状況で、しばらく実験が滞っていたため。今年になって数例の対照検体を入手したので、急ぎ実験結果の確認を行っている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の計画である副甲状腺細胞の分化促進とアポトーシスの関連についての研究を進めるとともに、新たに得られた対照検体を用いて昨年度できなかった分の免疫組織染色を行う。また、昨年度の研究で予測された細胞周期に関わる新たな因子の検出のために行うマイクロアレイを実施する。以上の実験に必要な試薬・消耗品等に使用する予定。
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