2015 Fiscal Year Research-status Report
腎虚血再灌流、低酸素負荷マウスにおける脳腎関連の分子メカニズムの解明
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15K19470
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
平野 麻子 (権藤麻子) 東京医科大学, 医学部, 助教 (70385079)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 腎虚血再灌流 / 脳腎関連 / 急性腎障害 / アストロサイト / ミクログリア |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、慢性腎臓病(CKD)と心血管障害の関連を示すエビデンスが構築され、複数の臓器間でのシグナル伝達、すなわちMulti-Organ interactionの概念が提唱された。中枢神経系と腎臓との関連については今まで詳細な検討はなされていなかったが、脳卒中における腎機能と生命予後との相関および認知機能と腎障害との関連も示されていることから、中枢神経系と腎臓は密接な関連があると考えられる。反対に急性腎障害においても脳神経において神経細胞死や血管障害を含む異常がみられるが、その分子機構は不明であった。本研究では、腎虚血再灌流モデルマウスを用い、脳腎関連におけるMulti-Organ interaction、特に急性腎障害によって誘導される脳血管障害分子機構の解明を目的とし研究を実施した。 本モデルはマウスの両側腎動脈を60分クリッピングにより虚血した後に血流を再開し、再灌流することによりヒト虚血性急性腎障害モデルを模倣する疾患モデルである。再灌流後24時間で血中尿素窒素の有意な上昇および腎機能悪化を示すクレアチニンの上昇を認め、急性腎障害を呈することを確認した。 次に遠隔臓器である大脳における腎虚血再灌流の影響について検討を行った。再灌流後24時間で摘出固定した同モデルマウスの大脳を用いた免疫組織学的検討により、大脳皮質および海馬CA1領域およびCA3領域まで広範に、抗Iba1抗体陽性のミクログリアの浸潤を観察した。すなわち、急性腎障害が中枢神経系において強い炎症反応を来すことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデルマウス作成に時間を要したが、その樹立に成功し、大脳においてびまん性にミクログリアの浸潤を観察したことから、腎不全が中枢神経系において炎症反応を来すことを確認した。今後は神経血管ユニットにおける蛋白レベルの解析を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスの急性腎虚血再灌流モデルの大脳では先に述べたように強い炎症性変化と神経変性が見られる。また末梢血内の炎症性サイトカイン上昇を認めることが報告されていることより、腎臓を起源とし全身性に炎症を波及する液性因子が存在すると予想している。今後は炎症に関与する分子、および血管内皮機能に関与する分子の発現の変化をWestern blot法を用いた生化学的手法により解析する。蛋白レベルでの解析に加え、DNA microarray等の網羅的mRNA解析や定量的PCR法を用い遺伝子レベルでの変化についても解析を行う。これらにより得られた結果を元に腎虚血時における神経血管ユニットの病態変化の解明を図る。 また、急性腎虚血再灌流後に発現が上昇する炎症性サイトカインおよび尿毒症物質の検索を行い、阻害剤等を用いて、急性腎虚血再灌流後に起こる中枢神経系機能異常に対する実験的治療を試みる。
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Causes of Carryover |
同施設内で使用可能な消耗品や実験動物があったため、予定より助成金使用額が減じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は実験動物の新規購入、抗体および各種サイトカイン測定に必要なマイクロプレート、試薬の購入を行う。
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