2015 Fiscal Year Research-status Report
タクロリムス誘導体のドラッグリポジショニングによる新規神経変性治療法の開発
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15K19482
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤内 玄規 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (00748353)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経変性疾患 / 球脊髄性筋萎縮症 / タクロリムス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では多くの神経変性疾患に共通する特徴である異常タンパク質の蓄積とそれに伴う神経細胞の機能低下を改善する治療を目指し、遺伝性神経変性疾患の一つである球脊髄性筋萎縮症(SBMA)の動物モデルと培養細胞モデルに免疫抑制剤として使用されるタクロリムスとその誘導体を投与し、その効果を生化学的解析、病理学的解析などにより検討した。 本疾患の原因である異常伸長したポリグルタミン鎖を持つヒト全長アンドロゲン受容体(AR)を導入したSBMA培養細胞モデルを使用しMTSアッセイ、WST-1アッセイ等を用いた細胞生存率の解析を行った結果、薬剤投与による有意な改善が見られた。薬剤投与による神経突起の伸長効果も確認でき、薬剤の細胞保護効果が示唆された。またウェスタンブロット、real-time PCR、免疫組織化学などを用いた解析により薬剤投与による変異ARタンパク質の発現低下とタンパク質品質管理機構に関わる分子の発現増加を確認した。 ヒト全長AR遺伝子を発現するSBMAモデルマウスに対し薬剤を長期間投与し、マウス表現型を体重変化、生存率、Grip、Rotarod法を用いて解析した結果、すべての解析で表現型の改善が見られた。またSBMA培養細胞と同じく、SBMAモデルマウスの脊髄、骨格筋においても薬剤投与による変異ARタンパク質の発現低下が確認された。今後薬剤が作用するタンパク質品質管理機構に関わる分子の特定と分解経路の解析を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りタクロリムス誘導体投与による細胞保護機能を解析し、SBMA培養細胞モデルの生存率改善効果、突起伸長効果が確認された。またSBMAモデルマウスへの薬剤の長期間投与も実施でき、病態進行抑制効果を確認している。また薬剤により発現が変化するいくつかの分解系に携わる分子の特定している。マウス組織の病理的解析も進んでおり研究計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
SBMA培養細胞においてタクロリムス誘導体投与による変異ARタンパク質の発現低下が確認できたため、様々な阻害剤やタンパク質分解に関わる分子のノックダウンを行い、タンパク質分解のメカニズムを探索する。今年度に行ったSBMAモデルマウスの表現型解析に引き続き、薬剤を投与したマウスの脊髄や骨格筋など各臓器についてウェスタンブロット、real-time PCR、免疫組織化学などを行い、タンパク質品質管理機構に関わる分子および神経栄養因子の発現を解析する。またマウス臓器、血液サンプルでテストステロン濃度や腎機能、肝・腎機能に対する薬剤の影響も解析する。SBMA培養細胞における分解系の阻害実験をふまえ、SBMAモデルマウスおける阻害剤存在下の薬剤投与による変異ARタンパク質分解の効果を解析し、変異タンパク質分解のメカニズムを解明する。
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Causes of Carryover |
1月以降に使用した実験動物施設使用料の支払いが平成28年度になる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度より翌年度にかけて予定している実験動物関連への支払いに充当する。
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