2015 Fiscal Year Research-status Report
T細胞によるグリアコネキシン喪失機構の解明とそれに基づく脱髄疾患の新規治療法開発
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15K19489
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
渡邉 充 九州大学, 大学病院, その他 (30748009)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 多発性硬化症 / 中枢神経脱髄性疾患 / グリア細胞 / ギャップ結合 / コネキシン / T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、アストロサイトに発現する代表的なコネキシン(Cx)蛋白であるCx43の発現を低下させる因子を見つけることから開始した。マウスの脳組織からグリア細胞の初代培養を開始し、そこにヘルパーT細胞由来の代表的なサイトカインである、インターフェロン(IFN)-γ、インターロイキン(IL)-4、IL-17などで刺激したところ、IFN-γによって濃度依存的にアストロサイトのCx43の発現が低下することを見出した。ここで培養したグリア細胞にはアストロサイトのみでなく、ミクログリアも混在していることから、磁気ビーズで標識された抗CD11b抗体を用いて、ミクログリアの分離を行い、アストロサイトのみを取り出した。培養アストロサイトをIFN-γで刺激したところ、Cx43の発現に変化がみられず、IFN-γによるアストロサイトのCx43減少には、ミクログリアを介することが示唆された。 次に分離したミクログリアにIFN-γを作用させ、その培養上清でアストロサイトを刺激したところ、Cx43の発現低下がみられ、アストロサイトのCx43発現低下には、ミクログリア由来の液性因子を介していることを見出した。その液性因子を同定するため、ミクログリアをIFN-γで刺激した培養上清中の複数のサイトカイン濃度を測定し、IL-1βや腫瘍壊死因子(TNF)-αが増加していることを見出した。そこで、IL-1βおよびTNF-αでアストロサイトを刺激したところ、両因子が作用した時にのみCx43の発現が低下した。 以上の研究から、ヘルパーT細胞のうちTh1細胞由来のIFN-γがミクログリアに作用し、IL-1βおよびTNF-αを産生させ、これらのサイトカインがアストロサイトのCx43を減少させることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アストロサイトの初代培養細胞を使用するにあたり、従来予定していた方法ではミクログリアの混在が無視できないため、磁気ビーズ標識抗体を持ちた分離法へ変更した。 またT細胞の分離・分化において、細胞の生存率や分化の程度が一定せず、その条件検討に想定以上の時間を要した。 以上の点で予定以上に時間を要したため、その後の研究に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
Th1細胞が主に産生するとされるIFN-γが、ミクログリアを介してアストロサイトのCx43を減少させることが分かったため、実際にTh1細胞にも同様の作用があるのかを細胞培養系を用いて検討する。 Th1細胞にアストロサイトのCx43を減少させる作用があるのであれば、MOGペプチド反応性Th1細胞やTh17細胞をマウスに移入することで実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を誘導し、Th1細胞移入のものとTh17細胞移入のもので重症度に差があるのかを検討する。 またCxのコンディショナルノックアウトマウスを用いてEAEを誘導し、中枢神経系脱髄におけるCx蛋白の重要性について評価する。
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Causes of Carryover |
研究の予備実験に想定以上の時間がかかったため、予定より研究が若干遅れ、そのために一部の研究費が余り次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度に行う予定であったT細胞培養の分離・培養・分化を行い、その細胞上清を用いてグリア細胞を刺激し、Cxの発現変化を28年度に調べる予定である。その研究に必要な培地・試薬等の購入に使用する予定である。
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