2016 Fiscal Year Annual Research Report
Necessary environment for amelioration after ischemic reperfusion injury in brain: the role of L-serine
Project/Area Number |
15K19497
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鈴木 将貴 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (90595000)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | L-セリン / PHGDH / 脳虚血再灌流障害 / D-セリン |
Outline of Annual Research Achievements |
脳虚血再灌流障害ではニューロンのエネルギーおよび酸素の枯渇による障害と再灌流後に発生する酸化ストレスによる神経細胞死が梗塞層の拡大に寄与していると考えられている。この時のアストロサイトの役割は十分に明らかにされていない。 アストロサイトはニューロンへピルビン酸などのエネルギー源の供給を行なっている。また、アストロサイトからニューロンへと供給されている分子に糖源性アミノ酸の一つであるL-セリンが知られている。L-セリンはニューロンでは合成されず、脳内では主にアストロサイトが合成している。このL-セリン合成律速酵素(phosphoglycerate-dehydrogenase:PHGDH)を欠損したマウスでは脳の発達異常により胎生致死となることが知られることから、L-セリンは神経栄養因子の一つと考えられている。 我々は先行する報告にてマウス中大脳動脈閉塞(MCAO)モデルにおいてD-セリンが増加し梗塞拡大に寄与する一方、L-セリンもまた梗塞周囲で有意に増加することを見出した。そこでまず、L-セリンはD-セリンが誘導する神経細胞死を抑制する可能性について、初代培養神経細胞を用いて検討した。初代培養神経細胞にD-セリンを処理するとアポトーシスが誘導された。D-セリンはグルタミン酸受容体(NMDAR)のコアゴニストであることから、受容体阻害剤がアポトーシスを阻害できるか否か検証した。しかしながらNMDARの阻害剤ではアポトーシスを阻害することはできなかった。一方でL-セリンによってD-セリン誘導性アポトーシスは完全に抑制できることを発見した。このことからD-セリンはNMDAR非依存性の機序によりアポトーシスを誘導し、その経路はL-セリンによって阻害される可能性を見出した。この経路は虚血再灌流障害における神経細胞死機序に関与している可能性がある。
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