2015 Fiscal Year Research-status Report
高中性脂肪血症の新たな分子機構解明と治療標的の探索
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15K19506
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高梨 幹生 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70610799)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脂質異常症 / ホルモン感受性リパーゼ / リポ蛋白リパーゼ / インスリン / カイロミクロン |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで行ってきた研究の成果から、インスリン欠乏時の高中性脂肪(TG)血症の成因として、小腸での脂質吸収・カイロミクロン(CM)合成が大きく寄与していることが示唆されており、さらにこの過程にホルモン感受性リパーゼ(HSL)が何等かの必須な役割を果たしていると考えられた。本研究課題では、ストレプトゾトシン(STZ)により糖尿病化させたHSL欠損マウスを用いて、高中性脂肪血症の新規分子機構の解明を目指している。 オリーブオイルの経口投与実験において、少量のMCT(medium chain triglycerides)オイルを混ぜると、投与後の高TG血症がほぼ完全にrescueされることを見出しており、MCTオイルのdose responseを確認するため、非糖尿病化マウス・糖尿病化マウスそれぞれに一定量のオリーブオイルに加え、様々な量のMCTオイルを混ぜて経口投与を行い、その後の血中TG上昇レベルを経時的に測定した。小腸での脂質吸収・CM合成におけるMCTオイルの機能が明らかにされることにより、またHSL欠損モデルでの高TG血症rescueのメカニズムと比較検討することにより、より普遍的な生理現象(脂質吸収やCM合成、脂質異化、一般的な高TG血症など)の基礎的理解を大きく推し進めると期待され、現在詳細に検討を進めている。 一方で、リポ蛋白リパーゼ(LPL)機能に関連する遺伝子(遺伝子X)の白色脂肪組織での発現が、HSL欠損マウスではほぼ皆無であり、かつ野生型ではインスリン欠乏時に増加することを見出した。このことは、HSL欠損マウスで高TG血症がrescueされる原因として、LPLが関与している可能性が再び浮上するものであり、現在詳細な検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの予備的検討から、インスリン欠乏時の高TG血症の成因は、「LPLによる異化の遅延」ではなく、「小腸での脂質吸収・CM合成の亢進」あるいは、「LPL以外の経路によるCM異化の遅延」が有力であると考えられていた。HSL欠損マウスでLPL機能に関連する遺伝子Xの発現がほぼ皆無であることは予想外の結果であり、高TG血症の成因として「LPLによる異化の遅延」の可能性を再検討する必要が生じた。平成27年度に当初予定していた実験は「小腸での脂質吸収・CM合成の亢進」を検証するためのものであるため、遺伝子Xに関連する実験を優先して進めることとなった。このため当初の実験計画に比べてやや遅れる結果となった。しかし、この再検討により得られる結果は高TG血症の成因の真相に迫るものであり、有意義な知見であると言える。現在各種臓器における遺伝子Xの発現状況の確認、および各種臓器でのLPL活性測定などの準備を進めている。 これとは別にMCTオイルによる高TG血症のrescueについてはdose responseを確認する実験により、その詳細が明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
インスリン欠乏時の高TG血症の成因を明らかにするため、現在進行中の遺伝子Xの各種臓器での解析、および各種臓器でのLPL活性測定をまずは予定している。その上で、当初予定していた小腸特異的HSL欠損マウスの作成を進める。同時に、通常食下あるいはオリーブオイル投与下など各種条件で、野生型マウスおよびHSL欠損マウスの小腸上皮細胞の組織学的解析を進める予定である。さらにはオリーブオイル投与後のリンパ管からCMを含んだリンパ液を回収し、CM構成脂質について脂質分析や、必要に応じてLC/MSによるリピドミクス解析などを行うほか、MCTオイルによる高TG血症rescueのメカニズム解析などから、高TG血症の新規分子機構の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
今年度の計画通りに研究費を使用してきたが、予想外の結果が得られたために、研究の進捗状況が他欄に記載の通りやや遅れることとなった。このため研究成果発表に要する経費の使用が少なくなり、残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、他欄に記載の通りに予定通り研究を進展させ、研究成果発表も進めていく。今回の残額を、次年度分の研究費と合わせて、活用する予定である。
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Research Products
(2 results)