2015 Fiscal Year Research-status Report
新規インスリン分泌制御因子による膵β細胞機能・インスリン感受性制御機構の解明
Project/Area Number |
15K19513
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西 清人 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (30749362)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | インスリン / 糖代謝 / エネルギー代謝 / 転写調節 / ナルディライジン |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)ナルディライジンが膵β細胞機能に果たす役割の解析 ナルディライジンが膵β細胞機能に重要な転写因子であるMafAの発現制御を介してインスリン分泌をコントロールすることを明らかにした。また、ナルディライジンによるMafAの制御機構にIslet-1が関与していることもわかった。さらに、膵β細胞特異的ナルディライジン欠損マウスにおいて、膵β細胞のlineage tracingの系を確立した。その系を解析した結果、ナルディライジン欠損によって一部の膵β細胞において脱分化や分化転換がおこることが明らかになった。以上の結果をまとめて論文を投稿中である。 (2)ナルディライジンが末梢臓器におけるインスリン感受性制御に果たす役割の解析 普通食条件下、高脂肪食条件下の肝細胞特異的ナルディライジン欠損マウスを用いた解析を行った。その結果、肝細胞のナルディライジンがマウス個体レベルの耐糖能、インスリン感受性を制御することを明らかにできた。さらに、マイクロアレイによる網羅的解析を行い、高脂肪食負荷やナルディライジン欠損によって変化し表現型をもたらしている遺伝子の同定に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膵β細胞機能の解析については、論文を投稿することができた。一方、インスリン感受性の解析においても、ナルディライジンの機能を解析するのに適当なマウスモデルを確立することができた。以上より、(2)おおむね順調に進展している、と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ナルディライジンが膵β細胞機能に果たす役割の解析 ナルディライジンによる膵β細胞機能制御には、前述のMafA依存経路だけでなく、MafA非依存の経路が存在することがわかっている。このMafA非依存経路の解析を進めることで、ナルディライジンによる膵β細胞機能制御機構をより詳細に明らかにする。また、これまでの解析はマウスモデルが中心であったが、ヒトの膵β細胞においてもナルディライジンが膵β細胞機能や分化の制御に関わるかについて解析を進める。具体的には、iPS細胞より分化誘導した膵β細胞においてナルディライジンの発現量を変化させて表現型を解析する。 (2)ナルディライジンが末梢臓器におけるインスリン感受性制御に果たす役割の解析 マイクロアレイの結果から、ナルディライジンが発現を制御している遺伝子群を絞り込む。絞り込んだ遺伝子群ついて、リアルタイムPCR法や抗ナルディライジン抗体をもちいたクロマチン免疫沈降法などを用いることで、ナルディライジンによる制御機構を明らかにし、新規のインスリン感受性制御機構を明らかにする。
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Causes of Carryover |
主に以下の2つの理由による。(1)遺伝子改変マウスを維持している施設において微生物汚染があり、一部のマウスを処分する必要があり解析できなかった。(2)成果の発表・討議に最もふさわしいと思われる国際学会が日本で開催された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度請求分とあわせて、物品費(試薬などの消耗品など)について100万円程度、旅費について40万円程度、その他(マウス飼育費など)について100万円程度の支出を予定している。
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