2015 Fiscal Year Research-status Report
メタボリックシンドローム関連遺伝子KAT-1による糖代謝制御メカニズムの解明
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15K19524
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
山本 隆史 杏林大学, 医学部, 助教 (00572033)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | キヌレン酸 / インスリン抵抗性 / 糖代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、キヌレン酸代謝系と糖代謝との関連を明らかにすることを目的とする。以前メタボリックシンドローム関連遺伝子として見出されたKAT-1はトリプトファンの代謝物であるキヌレニンからのキヌレン酸合成を触媒する。今年度の検討では、1、本遺伝子の8週齢の雄のノックアウトマウス(KAT-1KOマウス)では、血中・脳キヌレン酸量が優位に低下し、肝臓におけるキヌレン酸量は低下傾向を認めた。またKAT-1KOマウスは耐糖能の悪化とインスリン感受性の低下が認められ、キヌレン酸量と耐糖能異常との関連が示唆された。2、組織及び血中のキヌレン酸量と病態との関連を調べるため、栄養状態をかえた正常マウス及び糖尿病モデルマウスであるdb/dbマウスにおいてキヌレン酸量を測定した。血中キヌレン酸量は絶食時比べて摂食時で有意に高く、またdb/dbマウスでは対照マウスに比べて肝キヌレン酸含量が優位に増加していた。以上のことから、血中や組織中のキヌレン酸量が栄養状態や病態によって変動し、またin vivoにおいてキヌレン酸量が耐糖能に負の影響を及ぼす可能性が示唆された。 一方、キヌレニン代謝に関わるkynurenine monooxygenase (KMO)はキヌレニンからの3-Hydroxykinurenine合成を触媒する酵素である。マウス肝臓においてKMO発現を抑制したところ、肝臓において3-Hydroxykinurenine量が減少し、副流路であるキヌレン酸量の増加が認められた。このことから今後キヌレン酸と糖代謝との関連を明らかにする上でKMOの肝特異的な発現抑制がin vivoでキヌレン酸量を増加させる有用な手段であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は次の点について検討した。(1)キヌレン酸合成酵素の一つであるKAT-1遺伝子のノックアウトマウス(KAT-1KOマウス)についてキヌレン酸量を測定し各組織でのキヌレン酸含量の低下を認めた。KAT-1KOマウスでは耐糖能の悪化とインスリン抵抗性を認めた。(2)さらにキヌレン酸を組織及び血中のキヌレン酸量と病態との関連を調べるため、血中キヌレン酸量は絶食時に比べて摂食時で有意に高く、またdb/dbマウスでは対照マウスに比べて肝キヌレン酸含量が増加していた。以上のことから、キヌレン酸レベルが栄養状態や病態によって変動し、またin vivoにおいてキヌレン酸量が耐糖能に影響を及ぼす可能性が確認できた。よって、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の検討の中で、in vivoでキヌレン酸量を増加させる手段としてマウス肝臓におけるkynurenine monooxygenase (KMO)のノックダウンが効果的であることを見出した。キヌレン酸の前駆体であるキヌレニンからの3-Hydroxykinurenine合成を触媒する酵素KMOのノックアウトマウスでは間接的にキヌレン酸量が上昇することが報告されておりこれと一致する。キヌレン酸代謝系と糖代謝との関連を明らかにする上で、KAT-1KOマウスのみならずKMOのノックダウンが耐糖能やインスリン感受性に及ぼす影響も検討する予定である。
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