2015 Fiscal Year Research-status Report
新たな巨核球分化経路の探索と,造血幹細胞移植マウスモデルにおける応用
Project/Area Number |
15K19542
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
栗田 尚樹 筑波大学, 医学医療系, 講師 (30555561)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 巨核球前駆細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
造血器腫瘍に対する化学療法後の造血回復期にある患者の骨髄,および JAK2-V617F 変異を有する本態性血小板血症患者の末梢血より,CD34およびGPIbα陽性の細胞分画をフローサイトメ トリー法を用いて解析した.現在までに,計22人のサンプルを用いた解析を完了した.この細胞分画は申請者らのグループが既にマウスで同定した巨核球前駆細胞に相当する細胞分画であり,新たな巨核球分化経路に位置する細胞である可能性が高いと考えられた.そこで化学療法後の造血回復期にある造血器腫瘍患者から骨髄を採取し,GPIbα陽性,CD34陽性,CD38陰性,分化抗原陰性となる分画を,セルソータを用いて単離した. ヒト骨髄検体からセルソータで単離したヒト「巨核球前駆細胞」を,造血幹細胞用培地にて,サイトカインを添加して培養した.この際に造血幹細胞,古典的に巨核球分化の上流にあると考えられているCMP細胞およびMEP細胞も単離し,同様の条件で培養し各分画の巨核球への分化を観察した.申請者が同定した「巨核球前駆細胞」が新たな巨核球分化経路に位置するのであれば,同細胞から巨核球へのより効率的な分化が観察され,また他の細胞分画と異なり赤芽球系への分化は見られないことが予想され,現在解析を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね当初の計画通りに進展しており、順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
巨核球前駆細胞をセルソータで単一細胞に分離し,cDNAを作成した後にRT-PCRにて遺伝子発現を解析する.巨核球前駆細胞は,既に巨核球への分化が運命づけられた細胞であるとする仮説に基づけば,巨核球関連遺伝子であるcMpl,vWF,GPIbα,GATA1遺伝子が発現すると予想される一方,古典的な巨核球分化経路であるMEP細胞とは 異なり,赤芽球関連遺伝子であるCD71, EPO-R遺伝子は発現しないことが予想される.またこれらの遺伝子発現は,in situハイブリダイゼーションの手法を用いて,各細胞内の局在を観察する. また当グループにおけるマウスを用いた解析で,新たな巨核球分化経路にはNotchシグナルの関与が示唆されたため,これをヒトで証明する.造血回復期の患者から採取した骨髄生検検体を用い,巨核球前駆細胞に発現するマーカ(CD34,GPIbα)と,NotchリガンドであるJagged,Delta分子をそれぞれ蛍光抗体を用いて共染色し,共焦点顕微鏡を用いて観察する.巨核球前駆細胞とNotchリガンド陽性細胞が近接して存在することで,巨核球前駆細胞分化へのNotchシグナルの関与が間接的に示唆される.また巨核球前駆細胞を用いたRT-PCRにて,Notchシグナ ルの下流にあるHes遺伝子が発現していることを確認する.
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