2015 Fiscal Year Research-status Report
CRISPR/Cas9システムを利用した骨髄腫の悪性化に関わる分子機構の解明
Project/Area Number |
15K19561
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
太田 明伸 愛知医科大学, 医学部, 講師 (30438048)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 多発性骨髄腫 / 細胞増殖 / 遺伝子発現解析 / スクリーニング / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
多発性骨髄腫(MM)細胞の増殖・進展・薬剤感受性に関わる分子機構を明らかにするために、①IL-6依存性MM細胞株ANBL-6およびFLAM-76を用いてCRISPR/Cas9システムによる遺伝子破壊スクリーニングと②cDNAマイクロアレイ解析を行った。 ①市販のレンチウイルスCRISPRライブラリーを購入し、HEK293細胞を用いてウイルス調製を行いMM細胞株に感染させた。その後、IL-6非存在下において増殖を認めた細胞塊を拡大培養してIL-6非依存性に増殖する細胞株を確立した。これは、MM細胞株からIL-6依存性・非依存性の形質を持つ亜株を樹立した世界初の試みである。現在、各々の細胞において破壊された遺伝子の同定と性状解析を行っている。 ②一方、IL-6がIL-6依存性MM細胞株の遺伝子発現に与える影響を明らかにするために、ANBL-6およびFLAM-76を用いてcDNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、IL-6刺激12時間後、24時間後においてそれぞれ104個、667個の遺伝子が2倍異常の発現増加を示した。発現増加を認めた遺伝子の中には、既に報告のあるsuppressor of cytokine signaling 3 (SOCS3)、オステオポンチン、serum/glucocorticoid regulated kinase 1 (SGK1)の他に、MMにおいて機能が全く明らかになっていないMAPKキナーゼやマイクロRNAをコードする遺伝子が含まれていた。ウエスタンブロット解析の結果から、一部のMM患者検体やMM細胞株においてこの新規キナーゼタンパク質量が増加していることを見出した。さらに、promoter解析の結果からIL-6が新規キナーゼ遺伝子の転写を増強することが示唆された。現在、本キナーゼ遺伝子の破壊がMM細胞の増殖や薬剤感受性に与える影響を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を遂行する上で重要となるCRISPR/Cas9システムによる遺伝子破壊スクリーニング法が確立し、新たな形質を有する細胞亜株が得られていることから、研究計画はおおむね順調に推移していると考える。平成27年度の研究実施計画にある、樹立した亜株の性状解析は当該年度内に実施できていないが、別の手法で候補遺伝子を見出すことに成功している。これらの結果から、本研究の目的である骨髄腫の悪性化および治療薬の標的分子の同定を研究期間内に達成できる可能性は高い。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究成果に基づき、平成28年度では以下の2点について注力し研究目的の達成を目指す。 ①IL-6依存性・非依存性の形質を持つ亜株を用いた性状解析と破壊遺伝子の同定:IL-6依存性MM細胞株ANBL-6から樹立したIL-6非依性細胞亜株ANBL-6iのゲノム1次構造の変化を解析するために、アレイcomparative genomic hybridization解析とディープシーケンシング解析を行い、破壊された遺伝子を同定する。さらに、同定した遺伝子をCRISPR/Cas9システムによって個別に破壊し細胞増殖・細胞遊走・薬剤感受性に対する影響を解析する。 ②MM細胞における新規キナーゼ遺伝子またはマイクロRNAの機能解析:新規キナーゼまたはマイクロRNAを標的として、CRISPR/Cas9システムによる遺伝子破壊またはRNA干渉法による遺伝子ノックダウンを行い、各遺伝子がMM細胞のIL-6依存的・非依存的な増殖に与える影響を解析する。また、本キナーゼやマイクロRNAに対する特異的な阻害剤が細胞増殖に与える効果を解析し、治療薬の可能性を検証する。
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Causes of Carryover |
当該年度の研究計画にある受託ゲノム解析を2016年度に行う予定のため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に繰り越される研究費は、受託ゲノム解析に使用する予定である。しかし、迅速な研究成果の創出を考慮した場合、必ずしも当解析が最優先されない可能性がある。その場合、研究進捗状況や研究の方向性に鑑み、消耗品費として別の生化学実験や動物実験のために充当される。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Overexpression of salivary-type amylase reduces the sensitivity to bortezomib in multiple myeloma cells.2015
Author(s)
Mizuno S, Hanamura I, Ota A, Karnan S, Narita T, Ri M, Mizutani M, Goto M, Gotou M, Tsunekawa N, Shikami M, Iida S, Hosokawa Y, Miwa H, Ueda R, Nitta M, Takami A.
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Journal Title
Int J Hematol.
Volume: 102
Pages: 569-578
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research