2016 Fiscal Year Research-status Report
抗原感作後の抗原の経口投与による寛容誘導に関する実験的研究
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15K19567
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原田 広顕 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40579687)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アレルギー / 免疫寛容 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗原の経口投与が抗原特異的な制御性T細胞の分化を促し免疫寛容誘導に関わるのかを検証するために、野生型マウスにDO11.10マウスのnaiveCD4T細胞を移入した上で、OVA経口投与を行った。ここではnaiveT細胞としてCD4陽性T細胞のうちCD44陰性もしくはCD62陽性分画を用いた。制御性T細胞の代表的なマーカーであるFoxP3の発現を観察したが、OVA経口投与が移入細胞のFoxP3発現を有意に促進するとの結果は得られなかった。あらかじめ水酸化アルミニウムゲルを用いてOVAに感作させたマウスに対しても、naiveCD4T細胞を移入して同様の実験を行ったが、事前の感作によりFoxP3の発現が有意に抑制されるとの結果は得られなかった。 検体数・移入細胞数の不足によりこのような結果になった可能性は否定できないが、この実験系の免疫寛容誘導においては制御性T細胞への分化とは異なる機序が存在する可能性も想定された。 一方、DO11.10のCD4T細胞を培養液中でTh2細胞に分化させてから野生型マウスに移入する受動感作モデルを作成したところ、このモデルでOVA吸入により誘発される気道炎症は、吸入前にOVAを経口投与することにより抑制された。このことから、抗原特異的エフェクターT細胞が存在しても抗原の経口投与による免疫寛容の成立は可能であり、水酸化アルミニウムゲルによる感作は、抗原提示細胞などT細胞以外の細胞への作用を介して免疫寛容の誘導を阻害している可能性があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
既報では、抗原の経口投与による免疫寛容の成立には誘導性の制御性T細胞の分化が関わるとされているが、本研究ではそれを示すことができず、新たな理由を探る必要が生じている。また、受動感作モデルの実験で安定した結果を得るのに時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
OVAの経口投与により、OVA特異的naiveT細胞がどのように分化することで、免疫寛容の成立に関わるのかを探るため、FoxP3以外の制御性T細胞のマーカーやアナジーに関わるマーカーを探索する。 水酸化アルミニウムゲルによる感作が受動感作と異なり免疫寛容の誘導に抵抗性である理由を検証する。水酸化アルミニウムゲルにより感作を受けた個体の細胞を他のマウスに移入して感作させる方法を利用して、移入する細胞の種類を変えることで、どの細胞が免疫寛容の抵抗性に関わっているのかを探る。 さらにより臨床的な状況に近い感作の方法として、抗原を経鼻で投与する方法があるため、この場合において経口免疫寛容が成立しうるのかを検証する。免疫寛容誘導に抵抗性であった場合に、その原因が感作により誘導された抗原特異的エフェクターT細胞の抵抗性に由来するのかについても検証する。
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Causes of Carryover |
研究の遂行に関連する支出の一部を他の財源からまかなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
先に記述した研究計画の遂行のための財源として使用する。
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