2015 Fiscal Year Research-status Report
CD4陽性T細胞におけるTGF-beta3産生の意義と誘導機構の解明
Project/Area Number |
15K19568
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩崎 由希子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30592935)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | IL-27 / IL-6 / TGF-beta3 / 制御性T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究室では、CD4陽性CD25陰性LAG3陽性Egr2陽性新規制御性T細胞(以下LAG3+ Tregと表記)を同定しており、近年その抗体産生抑制には、サイトカインtransforming growth factor-β3 (TGF-β3)が重要であること、および、TGF-β3産生はEgr2依存性であることを報告した(Nat Commun.6:6329,2015)。申請者は既にIL-27(p28とEbi3のヘテロダイマー)がSTAT3依存性にナイーブCD4陽性T細胞にTGF-β3を誘導し、B細胞と共培養した際にB細胞活性化が抑制されることを見出している。 平成27年度は、C57BL/6マウス(以下B6マウス)脾臓より、ナイーブCD4陽性T細胞をセルソーターにより回収し、p28単独, Ebi3単独、IL-27単独, IL-6単独、p28 + Ebi3, p28 + IL-27, Ebi3 + IL-27, p28 + Ebi3 + IL-27, p28 + IL-6, Ebi3 + IL-6, p28 + Ebi3 + IL-6といった組み合わせにより、Egr2, TGF-β3がより効率的に発現する組み合わせについて、先ずはmRNAの発現を定量的RT-PCR法により検討した。上記各種サイトカイン刺激を行ったマウスCD4陽性細胞におけるmRNAの発現を調べたところIL-27+IL-6+p28+Ebi3の組み合わせでEgr2, TGF-β3の双方の発現が亢進することが判明した。一方興味深いことに、ELISAによるTGF-β3のタンパク質としての発現評価では、IL-6単独が最も強くTGF-β3産生を誘導していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的はマウス ナイーブCD4陽性T細胞にTGF-β3産生を効率的に誘導する刺激条件をIL-27を中心に探索すると共に、既に申請者らはIL-6もCD4陽性T細胞にTGF-β3を誘導するという結果を得ていることから、IL-27とIL-6のTGF-β3誘導の差異について検討することにある。平成27年度はTGF-β3のmRNAレベルでの発現亢進と、LAG3+ Tregを特徴づける転写因子Egr2のmRNAレベルでの発現亢進が、IL-27+IL-6+p28+Ebi3の組み合わせで得られることを明らかにした。p28とEbi3のそれぞれの欠損マウスではLAG3+ Tregが著明に減少し、Egr2およびTGF-β3を発現するLAG3+ Tregが殆ど認められないことも、これらIL-27を形成するヘテロダイマー各分子それぞれの重要性が示唆される。更に、CD4陽性T細胞刺激条件のうち、p28単独、Ebi3単独ではTGF-β3のmRNAレベルの発現亢進は認めないことから、これらの分子はIL-27ないしIL-6を介するシグナル伝達系を調整する形で機能している可能性が考えられた。一方で、CD4陽性T細胞の培養上清のELISAによる検討では、タンパクレベルでのTGF-β3の発現はIL-6刺激単独刺激が最も強くTGF-β3産生を誘導し、そのレベルはIL-27単独刺激の4-6倍に相当することが明らかになった。興味深いことに、IL-6にp28やEbi3あるいは、その両者を加えてもTGF-β3の産生量に大きな変化は認めない一方で、一定濃度のIL-6にIL-27を添加すると、用量依存的にTGF-β3の産生が低下する現象が認められた。現段階では、現象論に留まるものの、まずはTGF-β3を効率的に誘導する条件を絞り込むという当初の目標は達成しており、計画は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
TGF-β3は、2012年にTh17細胞から産生されると同時に、病原性の高いTh17細胞を誘導するという点で免疫学的に注目されたサイトカインであるが、申請者らはその免疫抑制能について報告しており、今後自己免疫疾患の新たな治療戦略を築く上で、その詳細な産生・作用メカニズムの解明が期待される。平成28年度は、マウスで得られた知見のヒトへの応用の可能性について検討することを目標とする。ヒトSLE患者と健常人のCD4陽性T細胞を中心としたリンパ球サブセットにおいて、IL-27やIL-6のシグナル伝達系の違いを検証する。
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