2015 Fiscal Year Research-status Report
HIV-1感染者の予後に関わるHIV-1特異的細胞傷害性T細胞の解析
Project/Area Number |
15K19588
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
村越 勇人 熊本大学, エイズ学研究センター, 特任助教 (60646123)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 細胞傷害性T細胞 / HLA / HIV |
Outline of Annual Research Achievements |
HLA-B*35:01がエイズ発症進行と強く関係していることは多くの研究者によって証明されているが、HLA-B*35:01陽性感染者のエイズ発症進行メカニズムはほとんど明らかとなっていない。そこで我々は、HLA-B*35:01陽性日本人感染者に見られるHIV-1感染制御と関連したHIV-1特異的CTLに着目し、この細胞の機能がどのような機序で損なわれているのか解析を行った。以前の研究で4つのエピトープ(Gag NY9、Pol VY10、Nef RY11、Nef YF9)特異的CTLがHIV-1のコントロールに重要な役割を果たしていることを示したが、これら4つのエピトープ領域について、HLA-B*35:01以外のHLA関連ゲノム変異を解析したところ、3つのエピトープで4つのHLA関連ゲノム変異が認められた。そのうちNef YF9エピトープ上のHLA-A*24:02関連Y135F変異だけが日本人感染者で蓄積していることが判明した。さらに、この変異を持つ人は持たない人よりも有意にpVLが高いことが認められ、Y135F変異はNef YF9特異的CTLによるHIV-1増殖抑制を減弱していると考えられた。さらに、YF9特異的CTLクローンを作製し、Y135F変異のCTL機能への影響を解析した結果、Y135F変異はCTLによる抗原ペプチドの認識を減弱させることが判明した。さらに、Y135F変異はin vitroでのYF9特異的CTLのウイルス増殖抑制能を有意に低下させることが明らかとなり、HLA-B*35:01陽性感染者においてY135F変異ウイルスはYF9特異的CTLによって排除されにくいと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HLA-B*35:01がエイズ発症進行と強く関係していることは多くの研究者によって証明されているが、HLA-B*35:01陽性感染者のエイズ発症進行メカニズムはほとんど明らかとなっていない。そこで我々は、HLA-B*35:01陽性日本人感染者に見られるHIV-1感染制御と関連したHIV-1特異的CTLに着目し、この細胞の機能がどのような機序で損なわれているのか解析を行った。その結果、NefYF9特異的CTLによるHIV-1コントロールがHLA-A*24:02関連のNefY135F変異によって減弱されていることが明らかとなった。これは、YF9特異的CTLによる抗原認識がこの変異によって減弱され、特異的CTLによって変異ウイルス感染細胞が排除できなくなるためであることが判明した。以上の知見は、日本人を対象としたエイズ治療ワクチンの開発だけでなくエイズの病態解析においてきわめて有用であると考えられる。したがって、現在までに実施した研究は、本研究の目的の達成に向けて、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
HLA-B*35:01陽性感染者のNef YF9特異的CTL機能を長期的に解析し、Nef Y135F変異が出現することでCTLの機能がどのように変化していくかを明らかにする。また、wild-typeウイルスまたはNef Y135F変異ウイルスに感染している患者について、YF9およびYF9-1F変異ペプチド結合テトラマーを用いてYF9特異的CTLの解析を行い、Y135F変異による、抗原特異性およびHIV-1増殖抑制能の変化の解析を行う。HLA-B*35:01を発現しているRMA-S細胞を用い、HLA-B*35:01に対するNef YF9またはYF9-1Fの結合能を解析する。Nef YF9またはYF9-1FペプチドをRMA-S細胞表面のHLA-B*35:01に結合させ、フローサイトメトリーによってこのHLAの発現レベルを測定し、それぞれのペプチドの結合能を評価する。それぞれの結合能を比較し、変異出現によるHLAに対するエピトープの結合能の変化を明らかにする。
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Causes of Carryover |
28年度の研究計画において、さらなるペプチド合成が必要であると考えられたため、次年度に繰越を行った。これにより、大幅な研究の進展が見込める。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
さらなるペプチド合成の費用を算出した。また、HLA発現解析用試薬、IFN-g細胞内染色用試薬、およびプラスチック器具にかかる費用を算出した。さらに、国内外の研究成果の発表に伴う旅費を算出した。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] A strong association of HLA-associated Pol and Gag mutations with clinical parameters2016
Author(s)
Giang Van Tran,* Takayuki Chikata,* Jonathan M. Carson, Hayato Murakoshi, Dung Hoai Nguyen, Yoshiko Tamura, Tomohiro Akahoshi, Nozomi Kuse, Keiko Sakai, Sachiko Sakai, Kyle Cobarrubias, Shinichi Oka, Zabrina L. Brumme, Kinh Van Nguyen, and Masafumi Takiguchi, (*Equal contribution)
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Journal Title
AIDS
Volume: 30
Pages: 681-689
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Different Effects of Nonnucleoside Reverse Transcriptase Inhibitor Resistance Mutations2015
Author(s)
Nozomi Kuse*, Mohammad Arif Rahman*, Hayato Murakoshi*, Giang Van Tran, Takayuki Chikata, Madoka Koyanagi, Kinh Van Nguyen, Hiroyuki Gatanaga, Shinichi Oka, and Masafumi Takiguchi, (*Equal contribution)
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Journal Title
Journal of Virology
Volume: 89
Pages: 7363-7372
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] ベトナム人HIV-1感染者に見られるHIV-1感染制御に関与したHIV-1特異的細胞傷害性T細胞2015
Author(s)
田村 美子, 村越 勇人, 丸山 理恵, Dung Hoai Nguyen, Giang Van Tran, 赤星 智寛, 久世 望, 近田 貴敬, 阪井 恵子, 小柳 円, 酒井 幸子, 岡 慎一, Kinh Van Nguyen, 滝口 雅文
Organizer
第29回日本エイズ学会学術集会・総会
Place of Presentation
東京都文京区(東京ドームホテル)
Year and Date
2015-11-30 – 2015-12-01
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[Presentation] ベトナム人HIV-1 subtype A/E 感染者コホートにおけるHLA-associated polymorphism の同定2015
Author(s)
近田 貴敬, Giang Van Tran, Jonathan Carlson, 村越 勇人, Dung Hoai Nguyen, 田村 美子, 赤星 智寛, 久世 望, 阪井 恵子, 小柳 円, 酒井 幸子, Kyle Cobarrubias, 岡 慎一, Zabrina Brumme, Kinh Van Nguyen, 滝口 雅文
Organizer
第29回日本エイズ学会学術集会・総会
Place of Presentation
東京都文京区(東京ドームホテル)
Year and Date
2015-11-30 – 2015-12-01
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[Presentation] ベトナム人慢性HIV-1感染者におけるHIV-1特異的細胞傷害性T細胞の網羅的解析2015
Author(s)
村越 勇人, 田村 美子, 丸山 理恵, Dung Hoai Nguyen, Giang Van Tran, 赤星 智寛, 久世 望, 阪井 恵子, 小柳 円, 酒井 幸子, 岡 慎一, Kinh Van Nguyen, 滝口 雅文
Organizer
第29回日本エイズ学会学術集会・総会
Place of Presentation
東京都文京区(東京ドームホテル)
Year and Date
2015-11-30 – 2015-12-01
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[Presentation] 7.Identification of HLA-associated polymorphisms in a cohort of HIV-1 subtype A/E infection2015
Author(s)
Tran Van Giang, Takayuki Chikata, Yoshiko Tamura, Tomohiro Akahoshi, Hayato Murakoshi, Nozomi Kuse, Shinichi Oka, Keiko Sakai, Nguyen Van Kinh, Masafumi Takiguchi
Organizer
IAS 2015
Place of Presentation
Vancouver, Canada
Year and Date
2015-07-19 – 2015-07-22
Int'l Joint Research
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[Presentation] 1.Control of HIV-1 by cytotoxic T cells specific for multiple conserved epitopes2015
Author(s)
Hayato Murakoshi, Tomohiro Akahoshi, Madoka Koyanagi, Takayuki Chikata, Takuya Naruto, Rie Maruyama, Yoshiko Tamura, Hiroyuki Gatanaga, Shinichi Oka, and Masafumi Takiguchi
Organizer
IAS 2015
Place of Presentation
Vancouver, Canada
Year and Date
2015-07-19 – 2015-07-22
Int'l Joint Research
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