2015 Fiscal Year Research-status Report
臨床検体、iPS細胞、マウスモデルを用いたメバロン酸キナーゼ欠損症の病態解明
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15K19610
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 孝之 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (20625678)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | iPS細胞由来単球 / 病態再現 |
Outline of Annual Research Achievements |
A)PBMCを用いた血球間の相互作用の解明に関して、2015年に新規症例1例、既知症例1例の血液を解析する機会を得て実験を行った。その結果、2例いずれにおいても単球単独をLPSで刺激した際にはIL-1beta分泌の亢進が見られたが、PBMC全体を刺激した時にさらなるIL-1beta分泌の亢進は認められなかった。2014年に血球間相互作用の見られた患者は発熱発作期にあった一方、2015年に血液を採取した患者の一方は発熱発作期、もう一方は間欠期にあった。2015年の実験で血球間の相互作用が再現されなかった原因については不明である。 B)患者iPS細胞由来単球では、健常者由来の単球に比べて、MK活性が低下しており、末梢血単球と同様の状態が再現されていることを確認した。その後、このiPS細胞由来単球を用いて、LPS刺激時のIL-1beta分泌を評価したところ、健常者と差が見られなかった。原因を明らかにするために、iPS細胞由来単球の形態、サイトカイン分泌、網羅的遺伝子発現を評価した。その結果、網羅的遺伝子発現については現在解析中であるが、iPS細胞由来単球は形態、サイトカイン分泌のパターンにおいては、末梢血由来単球より、単球からin vitroで分化させて作製したマクロファージに近いことが分かった。患者iPS細胞由来単球でIL-1beta分泌において健常者と差が見られなかった原因として、1つはiPS細胞由来単球の分化段階が末梢血単球とぴったり同じではなく血球としての機能に差があること、もう1つはin vitroの培養では期間が短いことからMK活性低下による単球への影響が限定的になっていること、が考えられた。 C)マウスモデルの開発については、ヘテロマウスの作製に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
A)末梢血PBMCの相互作用を見る実験では、2人の患者検体を用いても相互作用が確認されなかった。個人差や同一患者でも炎症の状態が異なるなど、検体の状況が異なることが原因と考えられる。 B)iPS細胞由来単球を用いた実験では、健常者との差が認められなかった。患者iPS細胞由来単球でIL-1beta分泌において健常者と差が見られなかった原因として、1つはiPS細胞由来単球の分化段階が末梢血単球とぴったり同じではなく血球としての機能に差があること、もう1つはin vitroの培養では期間が短いことからMK活性低下による単球への影響が限定的になっていること、が考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
A)末梢血PBMCの相互作用を見る実験では、違う検体では血球間の相互作用が再現される可能性もあるため、本年度も患者検体を得る機会があれば、同様の実験を繰り返して行う。 B)iPS細胞由来単球を用いた実験では、まもなく網羅的遺伝子解析の結果が得られるので、その結果を見たうえで、iPS細胞由来単球の分化段階を少し戻す、あるいは進める必要があれば、添加するサイトカインや分化にかける日数などを調整して分化段階を調節する。またメバロン酸経路を軽く阻害することで、患者末梢血で見られる過剰なIL-1beta分泌を再現することができないか、pamidronateやGGTIなどの阻害剤を用いた上で、iPS細胞由来単球からのIL-1beta分泌を評価する実験も行う。 C)マウスモデル作製については、ヘテロマウスを交配してホモ欠損マウスの作製を進める。
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Causes of Carryover |
患者検体を用いた実験、およびマウスモデル作製の実験においては当初の予定通りの研究費を使用した。iPS細胞を用いて行う実験において、iPS細胞から作製した単球で患者由来細胞とコントロールで差が見られなかった。そこで、患者細胞からの異常なサイトカイン分泌を抑制する化合物をスクリーニングする実験を始めることができなかった。そのために平成27年度に使用した研究費が当初の予定よりも少なくなった。また研究の進展がまだ途中の段階であったために学会発表が国内学会にとどまった。そのために旅費が少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
iPS細胞を用いた実験において、作製された単球を単にLPSやATPで刺激するだけではなく、メバロン酸経路の阻害剤を併用しながら、LPSなどで刺激する実験を行う。これにより患者細胞ではメバロン酸経路が阻害されている影響がより目立つようになり、異常なサイトカイン分泌が見られやすくなると想定される。その後、化合物のスクリーニングへ進む。スクリーニングの際も刺激物、候補化合物に加えて、一つ一つのウェルへメバロン酸経路の阻害剤を添加することが必要になるので、平成28年度に使用する研究費は当初の予定より多くなると想定される。
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