2016 Fiscal Year Research-status Report
てんかん重積状態の脳傷害に対する間葉系幹細胞を用いた新規治療法の開発
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15K19614
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
西山 将広 神戸大学, 医学研究科, 助教 (50741667)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / 胎児付属物 / 分化能 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も、昨年に引き続き、胎児付属物由来の間葉系幹細胞の分離・培養を行った。また、在胎週数毎の胎児付属物由来の間葉系幹細胞の性質の違いについても検証を行った。臍帯から単離した間葉系幹細胞の細胞増殖をMTS法で評価したところ、72時間後の細胞増殖率は、正期産児由来に比べて早産児由来では約1.5倍であった。以上のことから、早産児由来の胎児付属物由来の間葉系幹細胞では、正期産児由来と比べて増殖能が高いことが示された。さらに、定量的RT-PCRの結果から、早産児で細胞増殖率が高い要因として、WNTシグナル経路の遺伝子発現亢進が関与している可能性が示唆された。 また、てんかん重積状態の中心病態のひとつとされる炎症について、培養ミクログリアを用いて検証を試みた。グラム陰性菌細胞壁外膜の構成成分であるLipopolysaccharide (LPS)をligandとして、培養ミクログリアに刺激を与え、IL6やIL1αなどの炎症性サイトカインの遺伝子発現亢進を定量的RT-PCRにより確認した。 実験動物を用いた検証に関しては、てんかん重積モデルの確立には至っていないが、C57BL/6マウスを用いて、高架式十字迷路やオープンフィールドテストなどの行動試験による評価系を確立できつつある。 上記のように、胎児付属物由来の間葉系幹細胞の分離・培養を継続するとともに、在胎週数毎の間葉系幹細胞の特性について新たな知見を得た。また、培養細胞を用いた炎症病態の検証や、実験動物を用いた行動試験の評価を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画で予定していた通り、臍帯血や臍帯の採取が順調にすすみ、分離・培養を順調に行うことができている。さらに、胎児付属物由来の間葉系幹細胞の特性についても検証することができた。実験動物を用いたてんかん重積モデル確立はまだ達成できていないが、培養細胞を用いた実験を行うことでてんかん重積状態の中心病態のひとつとされる炎症について検証することができた。以上のことから、当初の研究計画と比べて達成できた点と未達成の点が混在しており、進捗状況は、おおむね順調に推移していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も胎児付属物由来の間葉系幹細胞の分離・培養を継続的に行うとともに、在胎週数や胎内環境による胎児付属物由来の間葉系幹細胞の性質の違いについて検証することを継続していく。また、培養細胞を用いて、胎児付属物由来の間葉系幹細胞による抗炎症効果の検証を試みるとともに、てんかん重積状態のモデル動物作成と、胎児付属物由来の間葉系幹細胞投与による治療効果を評価する予定である。
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Causes of Carryover |
細胞培養にともなう試薬や物品費、動物モデル作成のために見込んでいた費用は、当初見込んでいたよりも安く利用することができたため、今年度は使用額が少なかった。次年度は、動物モデルでの実験、研究打合せ、研究成果発表のための費用をより多く要する可能性があるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主として、間葉系幹細胞の分離・培養および動物モデル作成と間葉系幹細胞投与による治療効果検証のために使用する予定である。また、一部を国内外での研究打ち合わせや研究成果発表のために使用する予定である。
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[Journal Article] Short and long-term outcomes in children with suspected acute encephalopathy2016
Author(s)
Nishiyama Masahiro, Nagase Hiroaki, Tanaka Tsukasa, Fujita Kyoko, Kusumoto Mayumi, Kajihara Shinsuke, Yamaguchi Yoshimichi, Maruyama Azusa, Takeda Hiroki, Uetani Yoshiyuki, Tomioka Kazumi, Toyoshima Daisaku, Taniguchi-Ikeda Mariko, Morioka Ichiro, Takada Satoshi, Iijima Kazumoto
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Journal Title
Brain and Development
Volume: 38
Pages: 731-737
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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