2015 Fiscal Year Research-status Report
CRLF2高発現を示す小児B細胞型急性リンパ球性白血病発症の分子機構の解明
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15K19620
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
成戸 卓也 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 助教 (60438124)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 小児急性リンパ性白血病 |
Outline of Annual Research Achievements |
急性リンパ性白血病(ALL)は小児がんの約40%を占める。近年の層別化治療により治療成績は大幅に向上した。しかし、約20%の症例が再発し、再発例には既知の予後不良因子(Philadelphia染色体)を持たない例が存在する。JAK2 遺伝子変異とCRLF2 の高発現を伴う再発細胞株2株を発見した。この2株は、抗がん剤と酸化ストレスに極めて強力な抵抗性を獲得していた。 本年度においてB-ALL小児患者から樹立した細胞株のトランスクリプトーム解析を発現マイクロアレイを用いて行った。得られたデータはGeneSpringソフトウェアを用い、CRLF2高発現2株とそれ以外の株に対して解析した。生物学的な解釈は、各種フィルタや統計解析でピックアップした遺伝子リストに対して、GO解析、GSEA、GSAを行った。パスウェイ解析は相互作用データベースを用い、遺伝子リストに対して、相互作用のある分子を論文情報から検索した。 トランスクリプトーム解析より得られた結果の候補はリアルタイムPCRを用いてバリデーションした。対象のRNAに対するsiRNAを作成してノックダウンを行った。対照として変異型JAK2に対するsiRNAやJAK2に対する阻害剤を用いて機能解析を行った。 これらの結果から、JAK2変異-CRLF2高発現の標的分子と悪性化経路に関与する候補のスクリーニングい、標的RNAの絞り込みを達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績の概要で述べたとおり、本年度は当初の予定通りの進捗状況である。 樹立した細胞株からRNAを抽出し、Agilent社製遺伝子発現アレイ(SurePrint G3 Human GE マイクロアレイ 8x60K v2)によりマイクロアレイ解析を行った。得られたデータはリアルタイムPCR(Applied Biosystems 7500)を用いてバリデーションを行った。 マイクロアレイ解析より得られた結果から対象のRNAに対するsiRNAを作成してノックダウンを行っている。比較対象として既存経路のJAK2-STAT5系に対しては、JAK2選択的阻害剤(ルキソリチニブ)および特異的siRNAによりノックダウンした。 以上の理由から、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
新規の標的タンパク質を詳細に解析する。標的タンパク質はクロマチン免疫沈降 (ChIP)にて解析する。ChIPにて新たに候補となるRNAやタンパク質を見出した場合は、ノックダウンに戻り新たな解析を行う。 ChIPで得られたタンパク質はトリプシン消化した後、そのペプチド溶液を2DICALによるタンパク質同時絶対定量法で解析する。得られたMS/MS データを用いて In-house にて Mascotで検索を行い、細胞株におけるタンパク質発現プロファイルを明らかにする。 ChIPで得られたDNAは、ChIPと次世代シーケンサーを組み合わせたChIP-Seqで、タンパク質、DNA、RNAの相互作用を精度良く調べ、転写因子やヒストン修飾の標的領域を網羅的に解析する。候補となるタンパク質はウェスタンブロット、細胞染色によりバリデーションを行う。 細胞株に対して新しく見出した標的に対して化合物スクリーニングを行う。生細胞数をMTT assayにより算出する。
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Causes of Carryover |
トランスクリプトーム解析において、マイクロアレイによる全RNA 発現量解析で所定のデータを得られ、予定していた次世代シークエンサーを用いたRNA-seqが年度内未試行であるため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に次世代シークエンサーを用いたChip-Seq解析を次年度計画よりより重点的に行い、 タンパク質、DNA、RNAの相互作用を精度良く調べ、転写因子やヒストン修飾の標的領域を網羅的に解析するために使用予定である。
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