2016 Fiscal Year Research-status Report
ファブリー病末梢神経症状の発症にTRPチャネルは関与するか?
Project/Area Number |
15K19637
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
樋口 孝 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (30595327)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Anderson-Fabry Disease / α-galactosidase A / globotriaosylceramide / TRP channel / dorsal root ganglion |
Outline of Annual Research Achievements |
ファブリー病(Anderson-Fabry disease, FD)は遺伝子病の一つであり原因遺伝子はα-galactosidase A (GLA)遺伝子である。この遺伝子の異常によって全身の細胞にglobotriaosylceramide (Gb3)が過剰蓄積する。FDでは幼少期から手足の末端領域に感覚神経症状が発生するが、この症状は後根神経節(dorsal root ganglion, DRG)内部でのGb3過剰蓄積が関与すると考えられている。温度変化を知覚する受容体としてtransient receptor potential channel (TRP)チャネル群が知られている。FDではTRPチャネルの発現量が変化するという報告があるが、その詳しいメカニズムは解明されていない。今回FDの病態モデルマウス(ファブリーマウス)を用いて、マウス足底部の温度知覚、DRGのGb3蓄積などを解析した。ファブリーマウス(18週齢)をホットプレート(52℃)上に置きその忌避反応と反応時間(潜時・秒)を測定し正常マウスと比較したところ、ファブリーマウス群(15.40±1.74秒)は正常マウス群(10.45±0.20秒)よりも優位に潜時が上昇した。これまでにファブリーマウスは温度感覚に対して「敏感になる」という報告と、逆に「鈍感になる」という報告があり結論が分かれていた。我々の解析ではファブリーマウスは高温域で感覚鈍麻を示した。病理組織解析ではファブリーマウスDRGは神経細胞の細胞体にリソソーム顆粒を過剰に蓄積しており、Gb3の蓄積も確認できた。これらのことからDRGにおけるGb3の蓄積がファブリーマウスの温度感覚鈍麻症状に何らかの影響を及ぼしていると考えられた。しかし今回の解析ではDRGにおけるTRPチャネルの発現とリソソーム顆粒やGb3の蓄積との関係性は解明できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
病態モデルマウス(ファブリーマウス)を用いた感覚神経症状の解析試験に時間が掛かった。これまでに他の研究グループがファブリーマウス足底部の温度感覚解析をしていたが「敏感になる」という報告と、「鈍感になる」という報告があり結論が分かれていた。そこで我々はマウスの匹数や実験の反復回数を増やしてマウス行動試験を複数種類行った。病理組織解析でDRGにはGb3の過剰蓄積があることを示せたが定量分析までは至らなかった。また、本年度の解析ではDRGにおけるTRPチャネルとGb3蓄積の関係性を見出すまでには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
【機器分析(HPLC-MS/MS)によるGb3の定量解析を行う】病理組織学的解析によりファブリーマウスDRGにGb3が過剰蓄積していることを明らかにできたので、今後HPLC-MS/MSを用いて定量的にGb3の蓄積量を解析する。HPLC-MS/MSは当ラボに設置・稼働済みである。神経系組織ホモジネートサンプルはタンパク質や脂質に富むと考えられるため、除タンパクなどの夾雑物の除去操作が重要となる。【TRPチャネル発現とGb3蓄積の関係性を明らかにする】Gb3の蓄積量の変化がTRPチャネルの発現量に与える影響を解析する。【研究の総括】本研究の総括を行い研究発表や論文化を目指す。
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Causes of Carryover |
研究用マウスの使用数を減らしたためマウス購入代金とマウス飼育料の余剰金が出た。一部の解析を外部研究施設に委託する予定であったが、本年度委託したサンプル数は使用予定サンプル数よりも少なかったため余剰金が出た。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
機器分析法を用いてGb3の定量解析を行い、また細胞培養や免疫組織学的解析法を用いてTRPチャネルとGb3との関係性を解析する。具体的には電子顕微鏡(TEM)を用いてファブリーマウスDRGに過剰蓄積するリソソーム顆粒の構造解析を行う。HPLC-MS/MSを用いてGb3の定量解析を行う。DRGを酵素で消化し神経細胞の単離培養を行う。免疫組織学的解析によりTRPタンパク質の発現解析を行う。
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Research Products
(2 results)