2015 Fiscal Year Research-status Report
肺動脈性肺高血圧症の新規原因遺伝子の同定と機能解析
Project/Area Number |
15K19639
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
千田 礼子 東京女子医科大学, 医学部, 研究生 (10622160)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 肺動脈性肺高血圧症 / 遺伝子変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の新規疾患遺伝子を同定し、PAHの発症機序を解明することである。 既知の疾患原因遺伝子が同定されていない家族性PAHの患者等において、エクソーム解析によって検出したX遺伝子変異がもたらす、ヒト肺動脈平滑筋細胞(PASMC)におけるp53シグナル伝達経路への影響および細胞増殖能への影響を解析した。 real time PCRを用いて、野生型、変異型それぞれのX遺伝子発現ベクターを導入されたPASMCにおけるp53およびそのターゲット物質のメッセンジャーRNAの発現量を比較したところ、変異型が導入されたPASMCでは、野生型が導入されたPASMCよりもp53およびMDM2の発現量が低下していることがあきらかになった。また、ルシフェラーゼアッセイでも、変異型が導入されたPASMCではp53シグナル伝達経路の活性が低下していることがあきらかになった。さらにテトラゾリウム塩を用いて細胞増殖能を比較したところ、変異型が導入されたPASMCは、野生型が導入されたPASMCと比較して、細胞増殖能が亢進していることが示された。 ここまでの結果から、変異型X遺伝子はp53シグナル伝達経路の活性を低下させ、さらにp53の分解等に関わるMDM2の発現量を低下させることで、PASMCの増殖能力を亢進させている可能性があるといえる。これはX遺伝子変異がPAHの発症メカニズムに大きく関与している可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
real time PCRを用いた研究を実施し、成果を上げることができ、また、次年度以降に予定していたルシフェラーゼアッセイおよびテトラゾリウム塩を用いた評価を行うことができたのは非常に良好な点と言えるが、細胞数の計測による、PASMCの増殖能評価を十分に行えていないため、上記の区分とした。X遺伝子ベクターの導入がもたらす細胞毒性が強く、導入から数日後の細胞数を正確に評価するのが困難であることが、原因としてあげられる。 また、western blottingによるp53およびそのターゲットタンパクの発現量の比較、CRISPR/Cas9による、iPS細胞のゲノム編集もまだ不十分な状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)変異型もしくは野生型のX遺伝子ベクターを導入した、PASMCの増殖能の評価を行う。 (2)変異型もしくは野生型のX遺伝子ベクターを導入したPASMCにおいて、western blottingを用いて、p53およびそのターゲット蛋白の発現量の比較を行う。 (3)CRISPR/Cas9による、iPS細胞のゲノム編集をすすめる。
28年度は27年度以上に、より本研究の遂行に専念できる環境を整え、引き続きX遺伝子の機能解析をすすめていくこととする。
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