2015 Fiscal Year Research-status Report
小児潰瘍性大腸炎に対する糞便移植と腸内細菌叢の検討
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15K19647
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
清水 泰岳 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, その他部局等, その他 (80751198)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 糞便移植 / 潰瘍性大腸炎 / 小児 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、本邦の小児潰瘍性大腸炎における糞便移植の有用性・安全性を明らかにするとともに、本邦小児潰瘍性大腸炎患者における腸内細菌叢の特徴と移植による変化を明らかにすることを目的とし、小児潰瘍性大腸炎患者に対して糞便移植を実施している。 反復して糞便移植を行ったことにより治療効果が得られた先行症例について、その有効性と、糞便移植による腸内細菌叢の劇的な変化をPediatrics International誌に報告した。現在は、この結果を踏まえて、反復して複数回の糞便移植を行うプロトコールで糞便移植研究を行うこととしている。 平成27年度には、安全かつ適切に、移植便の前処理ができるように、前処理に必要な物品や容器などの設備投資を行い、糞便移植を実施できる体制を整えた。また、腸内細菌叢の解析に必要な検体採取~解析に至る体制の整備、解析のために必要な便検体の採取プロトコールについて検討を重ね、その体制を整えた。 平成27年度末までに、予定した3例の小児潰瘍性大腸炎の新規症例の導入に加え、1例の超早期発症の炎症性腸疾患症例に対して糞便移植を開始し、現在、解析に必要な便検体の採取を行っているところである。 腸内細菌叢に関する解析には時間を要するため、まだ解析はできていないが、保存された検体を用いて、今後、解析を行う予定である。 また、平成28年度には、新たに5例の新規症例に対する糞便移植の導入を目指して研究を継続する方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度には、糞便移植に必要な設備投資を行い、安定的に前処理を行える環境を整えることができた。また、腸内細菌叢の検討に関して、プロトコールの作成に時間を要したが、検体採取のタイミングおよび検査実施に向けた体制を整えることができた。 さらに、実際に平成27年度に目標としていた3例に対する糞便移植を実施し、加えて、超早期発症の小児炎症性腸疾患児に対する糞便移植も1例に対して実施することができた。 したがって、現在までの進捗状況としては、概ね順調に進展しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、引き続き、糞便移植を継続し、年間5例の新規導入を目標とする。平成27年度と同様に、臨床的症状スコアを定期的に評価し、内視鏡的な粘膜治癒の有無、他の治療薬の減量離脱効果を含めて、臨床的治療効果を評価する。 さらに、便中の腸内細菌叢の解析を進め、検討を行う。まず、移植前の小児潰瘍性大腸炎患者の腸内細菌叢を検討することにより、本邦の小児潰瘍性大腸炎患者における腸内細菌叢の細菌組成の異常の有無、また腸内細菌数の低下の有無、多様性の低下の有無などを評価する予定である。 また、糞便移植に伴い、それらの構成細菌にどのような変化が見られたか、糞便移植が奏功した患者と奏功しなかった患者で歳があるのかなどについて分析し、糞便移植の治療効果を高めるための方法について、検討する。 これらの研究成果をまとめて、英文の論文として医学雑誌に投稿することを目標とする。
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Causes of Carryover |
今年度は、便移植研究の実施体制を整えるために必要な設備投資を行った。一方で、最も費用がかかる便検体の腸内細菌の解析を行うための費用に関しては、関係機関と調整を進め、実際の解析開始は次年度に持ち越す形となった。 腸内細菌の解析は、試薬等の費用が高額であるため、貴重な研究費を必要な腸内細菌叢の解析に充てられるように、今年度分の支出を極力少なくなるようにしたため、次年度使用額が生じる結果となった。 また、糞便移植に関する研究報告を古くから行っているオーストラリアのT. Borody教授の施設の視察についても、先方の事情もあり、次年度に行う予定となった。さらに次年度には国際学会での研究成果の発表を目指している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、現在採取・保存している糞便検体について、腸内細菌叢の解析を開始する予定である。また、糞便移植の実施成績を、カナダのモントリオールで開催されるWCPGHAN(World Congress of Pediatric Gastroenterology, Hepatology and Nutrition)で発表する予定である。 さらに、糞便移植を古くから研究し、高い治療成績を報告しているオーストラリアのCentre for digestive Diseasesを視察し、糞便移植法の実際や、治療効果を高めるための工夫などについて情報を収集し、研究に役立てたいと考えている。
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