2016 Fiscal Year Research-status Report
小児潰瘍性大腸炎に対する糞便移植と腸内細菌叢の検討
Project/Area Number |
15K19647
|
Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
清水 泰岳 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 器官病態系内科部, 医師 (80751198)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 小児消化器病学 / 下部消化管学(小腸、大腸) / 糞便移植 / 腸内細菌叢 / 潰瘍性大腸炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
2013年に糞便移植を開始した先行症例1例では、インフリキシマブ、アザチオプリン、タクロリムスを使用してもステロイド依存性に再燃を繰り返していた11歳の女児に対し、父をドナーとする糞便移植を反復施行することによって、ステロイドの離脱と、インフリキシマブ、アザチオプリンでの寛解維持が可能となった。 2015年からは、抗菌薬(バンコマイシン、メトロニダゾール、リファンピシン)による前処置後に糞便移植を反復施行するプロトコールで糞便移植を開始し、潰瘍性大腸炎の男児4例と乳児期発症の炎症性腸疾患の女児1例に対して実施した。 その結果、ステロイド依存性に再燃を反復していた潰瘍性大腸炎の男児1例では、無投薬での寛解維持が可能となった。残る4例は、いずれも十分な効果が得られず、1例が生物学的製剤の導入、3例が外科的大腸全摘術(1例は手術予定)となった。 糞便中の腸内細菌叢の解析を行ったところ、注入した移植便を保てずにすぐに排泄してしまった乳児期発症の1例では全く腸内細菌叢組成に変化が見られなかったが、それ以外の4例では実施前よりもドナー細菌叢に組成が近似する傾向が見られた。 以上のように、潰瘍性大腸炎患者における糞便移植は通算で、6例中2例に改善効果を認めた。うち1例は手術治療が考慮されていたが、手術を回避し既存治療での寛解維持が、別の1例では無投薬での長期寛解維持が、それぞれ可能となった。その一方で、その他の症例では糞便移植によって、糞便中の菌叢組成にドナーに近似する変化が認められたが、臨床的な改善には結びつかなかった。その理由としてドナー細菌叢側の問題があるのか、病態に細菌叢以外の要因が関与しているのかはまだ明らかとなっていない。今後、さらに症例を蓄積し、奏功例と無効例での細菌叢の比較などの解析を進めていく必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述の通り、通算で、6例に糞便移植を実施し、うち2例に改善効果を認めた。また、抗菌薬による前処置を変更し、新たなプロトコールで2例に対して糞便移植を実施中である。 成人に比べて、罹患者数の少ない小児の潰瘍性大腸炎患者を対象とした研究であり、研究への参加を希望する患者の組み入れに当初の予想よりも時間を要したため、当初の予定よりも研究の進捗状況はやや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、臨床効果を高めるために、ドナー細菌叢の検討を進めるとともに、新たな抗菌薬前処置法による治療効果や、便処理法の違いが与える影響についての検討を重ねる予定である。
|
Causes of Carryover |
本研究費のもとで、小児潰瘍性大腸炎患者に対する糞便移植をこれまでに計7例に対して実施してきており、その成績を国内外の学会で発表してきた。外科的手術回避目的で糞便移植を実施したものの改善が得られず、手術に至った症例もあったが、糞便移植が奏功し、薬物治療なしでの寛解を達成した症例もあった。小児潰瘍性大腸炎患者は成人よりも患者数が少なく、当初の予定よりも、対象患者の組入れに時間を要しており、解析が次年度にずれ込むこととなったため、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
患者の組入れが進み次第、糞便移植および便処理条件に関する研究を進め、検体を採取の上、解析を進めていく予定である。
|