2015 Fiscal Year Research-status Report
バルプロ酸の胎仔マウスの心臓に及ぼす影響とその分子生物学的メカニズムの解明
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15K19659
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
金井 祐二 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (60448628)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バルプロ酸 / ヒストン脱アセチル化酵素 / マイクロRNA / 胎児催奇形性 / 胎児心血行動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
バルプロ酸(valproic acid:以下VPA)は、てんかんや片頭痛などに適応があり、妊娠可能な女性にも使用されることがある。先天性心疾患を含む胎児催奇形性が指摘されており、VPAの有するヒストン脱アセチル化酵素(Histone deacetylase:以下HDAC)阻害作用が関与しているとの報告があるが、その分子生物学的メカニズムは解明されていない。本研究は、妊娠マウスを用いてVPAが胎仔心臓に与える影響を検討する。分子生物学的評価はマイクロRNA(以下miRNA)に重点をおき、VPAが阻害するHDACの発現と、それに関わる標的miRNAを同定し,標的miRNAが発生段階における胎仔心臓にどのような影響を及ぼすかを検討する。 実験は、CD1マウス雌雄の交配により得られた妊娠マウスを用いる。交配翌朝を在胎日齢(ED)0.5として、ED7.5の母マウスにVPA(700mg/kg)を腹腔内投与し、小動物用超音波高感度イメージングシステムを用いて心臓形態形成初期のED9.5から心臓内構造がほぼ完成するED13.5までの胎仔心血行動態を検討する。分子生物学的評価は、ED9.5とED13.5の胎仔心臓を用いてHDACの蛋白発現やmRNA、miRNAの発現解析を行う。蛋白発現はウェスタンブロッティングにて解析し、mRNAの発現解析についてはqPCRを用い定量的に評価する。miRNAについてはmiRNAデータベースを用いた検索で、35のmiRNAがHDAC1と関連があると報告されており、その35個のmiRNAと内因性コントロールを搭載し、本研究用にカスタマイズしたTaq Man Low Density Array Card(Applied Biosystems)を依託作成し、定量でアレイ解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究を行うにあたり、大学での動物実験計画の承認(承認番号:動第27108号)を得た。平成27年度は、母体VPA投与マウスの作製を行い、母体VPA投与群、非投与群での胎仔心血行動態の評価、胎仔心臓の採取と分子生物学的評価を行うことを計画した。VPA非投与群での胎仔心血行動態の評価を行い、心臓形態形成初期の在胎日齢(ED)9.5から、心臓内構造がほぼ完成するED13.5までMモード法を用いて心室壁運動を測定し、ドプラ法にて動脈幹・背側大動脈・内頚動脈・母マウスの臍帯動静脈・子宮動脈の血流を測定した。ED9.5とED13.5の心血行動態評価後に子宮内から胎仔、胎盤および子宮筋を採取した。胎仔、胎盤および子宮筋のHDACの蛋白発現やmRNAの発現解析目的にそれぞれ、蛋白の抽出とRNAの抽出作業を行った。mRNAの抽出にはRNeasy Mini Kit (QIAGEN)を用い、RNAの品質の客観的評価に2100 バイオアナライザ(Agilent Technoligies)のRNA Integrity Number (RIN)を用いた。国際標準であるRIN値7.0以上となるRNAの抽出作業手技の取得に時間を要したため、計画に遅れを生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
母体VPA投与マウスを作成し、VPA非投与群と同様に胎仔心血行動態の評価を行う。また平行して、摘出した胎仔、胎盤、子宮筋に関して、HDACの蛋白発現やmRNA、miRNAの発現解析を今後行う。蛋白発現はウェスタンブロッティングにて解析し、mRNAの発現解析については定量PCRにて評価する。miRNAの抽出には、miRNeasy Mini Kit(Quagen)を用いて行い、本研究用にカスタマイズしたTaq Man Low Density Array Card(Applied Biosystems)を依託作成し、定量でアレイ解析を行う。
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Causes of Carryover |
研究計画が遅れているため、当該助成金が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
miRNAデータベースを用いた検索で、35のmiRNAがHDAC1と関連があると報告されている。その35個のmiRNAと内因性コントロールを搭載し、本研究用にカスタマイズしたTaq Man Low Density Array Card(Applied Biosystems)を依託作成し、定量でアレイ解析を行う。コントロール群と比較し、2倍以上発現量が変化したmiRNAを標的miRNAと設定し、標的miRNAのmimic, inhibitorとnegative controlを経静脈投与する予定である。次年度使用額については、それらの物品の購入を充てる。
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