2015 Fiscal Year Research-status Report
発育不全児の神経学的予後を評価しうる血液、超音波、および胎盤病理所見に関する研究
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15K19662
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
仲村 将光 昭和大学, 医学部, 講師 (50465126)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 胎児発育不全 / 臍帯静脈流量 / 胎児機能不全 / 胎盤機能 / 周産期予後 / 臍帯過捻転 / 臍帯異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
a)出生体重が-1.5SD以下であったCase、およびそれ以上であったControlにおける臍帯静脈流量(UV flow)の基準値を作成した。b)妊娠20週と36週のUV flowを測定し、その増加量が少なかった症例とそうでなかった症例の予後を比較した。c)分娩時のUV flowが10%tile未満の症例と10%tile以上で分娩予後を比較した。 対象と方法:対象はすべて単胎。子宮内胎児死亡、染色体異常、および形態異常は対象から除外した。a)妊娠22週以降に分娩した症例で、妊娠20週以降、1~2週ごとにUV flowを測定した。Caseは出生体重SD値が-1.5SD未満、ControlをCaseの2倍の数で妊娠36週以降に分娩した-1.5SD以上とした。臍帯異常の有無によってUV flowが増減していたのか検討した。b)妊娠36週以降に分娩した症例を対象に、妊娠20週および妊娠36週でUV flowを測定し、(妊娠36週のUV flow-妊娠20週のUV flow)が10%tile未満のCaseとそれ以上のControlで予後を比較した。c)妊娠36週以降に分娩入院した際のUV flowを測定し、10%tile未満をCase、それ以外をControlとして分娩予後を比較した。 成績:a)妊娠経過とともにUV flowは増加した。CaseにおけるUV flowは正常発育群に比較して減少しており、出生体重SD値が低いほどUV flowはより減少していた。臍帯異常合併では、合併しなかった場合に比べ、UV flowは低い傾向を認めた。b)Caseでは、臍帯過捻転の頻度が高く、出生体重(SD値)が有意に低く、Light-for-date児が有意に多かった。c)CaseとControlでは出生体重(SD値)は差がなかったが、Caseにおいて胎児機能不全の頻度が有意に頻度が高かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の目的であった胎児の長期神経学的予後を予知可能であると考えられていたFetal thrombotic vasculopathy (FTV)という胎盤病理所見を病理専門医3人に相談し、その診断基準を作成し、統一したプロトコルで全国的にFTVの診断を確立することが可能であると考えていた。しかし、過去にRedlineらが報告したFTVの所見について、経験ある病理医でも経験した症例が少なく、所見があいまいなものであるとの意見をいただき、前向きに胎児発育不全、胎児機能不全、臍帯異常を合併した症例の胎盤病理を見ているが、診断基準を作成できるほど、過去に報告があるFTVの所見の頻度が少なく、基準作成は現段階で困難な状況である。今後も、胎盤の病理学的検査を幅広く行い、FTVの所見を認めた症例を重ねることにより、FTVの診断基準作成が進行すると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
対象疾患は頻度が少ないので28年度も27年度に引き続き同様の画像および胎盤病理のデータの収集を続ける。その中から、胎児発育不全が予測される母体背景や超音波および胎盤病理所見を持ち、倫理委員会の規定に基づいて文書によって同意が得られた症例に対し、血液検体の採取を行う。胎児発育不全を発症した症例20例を目標に、神経学的予後が不良であった症例の超音波および胎盤病理所見を評価し分析を行う。妊娠11~13週以降に10 mLの採血を行い、7mLはEDTA採血管に、残りはPAXgene Blood Tube (Quiagen)に採取する。EDTA採血管で採血したサンプルは、3000rpmで遠沈し、上清を分取して再度遠沈し、血漿として1mLずつマイクロチューブに分注して凍結保存する。PAXgene Blood Tubeは、室温で3時間放置後、そのまま凍結保存する。分娩後の胎盤においては、病理学的な検討を行い、超音波所見と比較し、超音波所見の意義について検討を行う。胎盤早期剥離症例では、胎盤後血腫があり早期剥離していたと考えられる部分と後血腫を認めない剥離していないと考えられた部分を別々に採取し、凍結薄切標本の作製用に包埋し、凍結・保存する。 1)胎盤病理所見: 日本人の出生時体格基準値により、出生体重が平均の‐1.5SD以下の症例の胎盤をホルマリンに浸し、固定する。一定時間固定した後、病理診断教室の病理学専門医によって児の神経学的予後(胎児死亡、新生児死亡、脳性麻痺、発達障害)と関係すると報告があるFetal thrombotic vasculopathy (FTV)の所見の有無を診断する。出生体重が‐1.5SD以上の症例の胎盤病理所見との比較を行うこと、また、臍帯異常の有無により、FTVの頻度に違いがあるのかを分析する。
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Causes of Carryover |
平成27年度は胎児発育不全の発症予測、またその予測に関連の強い、妊娠11~13週に計測した絨毛胎盤体積、臍帯動静脈血流、子宮動脈血流波形の超音波所見を認めたそれぞれの頻度、および予測精度を明らかにし、予測に使用可能な画像所見を蓄積した。さらに、インフォームドコンセントのもと、母体血漿を採取し、凍結保存を行う予定だったが、血漿保存する検体が少なかったことがその理由の一つである。 また、胎盤の病理学的評価を行うための染色法や診断基準の作成が遅れており、染色のための試薬の購入ができていないことが、研究費の使用が滞っており、次年度使用額が生じた理由の大きな要因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
対象疾患は頻度が少ないので27年度に引き続き同様の画像および胎盤病理のデータの収集を続ける。その中から、胎児発育不全が予測される母体背景や超音波および胎盤病理所見を認めた症例に対し、血液検体の採取を行う。胎児発育不全を発症した症例20例を目標に、神経学的予後が不良であった症例の超音波および胎盤病理所見を評価し分析を行う。分娩後の胎盤においては、病理学的な検討を行い、超音波所見と比較し、超音波所見の意義について検討を行う。胎盤早期剥離症例では、胎盤後血腫があり早期剥離していたと考えられる部分と後血腫を認めない剥離していないと考えられた部分を別々に採取し、凍結薄切標本の作製用に包埋し、凍結・保存する。
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