2016 Fiscal Year Research-status Report
Development of novel biomarker and treatment of neonatal hypoxic-ischemic encephalopathy
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15K19663
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
赤松 智久 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第二部, 流動研究員 (10737985)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 低酸素性虚血性脳症 / LOX-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.nHIEモデルラットを用いたLOX-1の分子機序の解明について nHIEモデルラットのHI負荷後48時間後の脳パラフィン切片を作成し、免疫染色によってnHIEにおける脳のLOX-1発現細胞の同定を行った。平成27年度には神経細胞にLOX-1が発現していると考えられたが、その後、再現が不可能であった。nHIEモデルラットでは、白質ではなく灰白質部分が傷害されることから、神経細胞、アストロサイト、ミクログリアのいずれかにLOX-1が発現していると考え、抗LOX-1抗体および抗MAP2抗体、抗GFAP抗体、抗Iba1抗体の二重染色を様々な染色条件で施行した。その結果、nHIEにおいてLOX-1は主にミクログリアに発現していることがわかった。 2.nHIEモデルラットに対するLOX-1阻害の治療効果の検証 nHIEモデルラットにおいて、HI負荷直後からの抗LOX-1中和抗体治療(60μg/kg/dose、12時間毎)に神経保護作用があることはすでに報告した。抗LOX-1中和抗体治療のtherapeutic time windowを明らかにするため、HI負荷後1,3,6,12時間後に治療開始時間をずらし、HI負荷後48時間後に梗塞面積、アポトーシス細胞率、脳浮腫評価を行った。HI負荷後3時間の開始まではいずれの評価でも直後開始と同等の効果が認められた。 3.ヒトnHIEにおけるバイオマーカーとしてのLOX-1の可能性 研究協力機関より20症例(コントロール群7例、nHIE群13例)の検体が集まり、sLOX-1の測定を行った。日齢0のsLOX-1の値は、コントロール群にくらべてHIE群では、高い傾向にあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.nHIEモデルラットを用いたLOX-1の分子機序の解明について 当初の計画では平成27年度に機序の解明を行う予定であったが、すべての計画を同時進行で行っているため、実施に遅れが認められる。しかし、nHIEにおいてLOX-1がミクログリアに発現しているという報告は今までになく、nHIEの病態およびLOX-1の作用機序の解明が期待できる。 2.nHIEモデルラットに対するLOX-1阻害の治療効果の検証 平成27年度に抗LOX-1中和抗体治療と低体温療法の併用、平成28年度に抗LOX-1中和抗体治療のtherapeutic time windowの検証を行っており、少しずつではあるが進んでいる。中和抗体治療では臨床につなげにくいこともあり、他のLOX-1阻害物を模索中であるため計画より多少の遅れがでている。 3.ヒトnHIEにおけるバイオマーカーとしてのLOX-1の可能性 計画よりも検体の収集に時間がかかっているが、協力機関が増えたこともあり、平成28年度の後半に集まった検体が多く、今後はより早く検体が収集できることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.nHIEモデルラットを用いたLOX-1の分子機序の解明について nHIEモデルラットにおけるミクログリアの働きを確認し、ミクログリアにおけるLOX-1の働きを解明する。同時に、in vitroにてprimary ミクログリアを用いてミクログリアでのLOX-1の働きを解明する。 2.nHIEモデルラットに対するLOX-1阻害の治療効果の検証 これまでの研究に引き続き、nHIEに対する抗LOX-1中和抗体治療の容量による効果の違いについての検討を行う。また、上記in vitroミクログリア実験において、LOX-1阻害作用を有する物質がミクログリアの働きに影響をおよぼすかを検討し、in vivoでの新たなLOX-1阻害治療へと発展させる。 3.ヒトnHIEにおけるバイオマーカーとしてのLOX-1の可能性 研究協力機関からの検体収集をつづけ、血漿sLOX-1のSarnat重症度分類との相関を示し、診断マーカーとしての有用性を証明する。さらに、sLOX-1と短期予後との相関を示し、予後マーカーとしての有用性も証明する。新生児でsLOX-1の測定が行われたことがないため、周産期因子とsLOX-1の関連についても明らかにする。
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Causes of Carryover |
nHIEにおけるLOX-1の分子作用機序の解明の実験に関しては、LOX-1発現細胞の同定に時間がかかり、その間は抗体を購入するのみで特別な試薬等の購入を必要としなかったために支出が抑えられたと考える。 LOX-1阻害治療の実験においては、動物購入のみで治療薬は前年度に購入したものを使用できたために支出が抑えられたと考える。また、新たなLOX-1阻害物質によるnHIE治療の試みについては、in vitroでの実験を優先と考え、いまだ試薬の購入がなされていないため支出が抑えられた。 ヒトnHIEのバイオマーカー開発に関しては、想定よりも検体の収集に時間がかかっており、前年度よりは多いものの測定にかかる支出が抑えれらた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
nHIEにおけるLOX-1の分子作用機序の解明実験においては、in vivoおよびin vitroの実験を並行して行うことを予定しており、動物購入費用、細胞培養費用が予想される。同時に、免疫染色、western blotting、qPCR、マイクロアレイの試薬等に使用の予定である。 LOX-1阻害治療の実験では、新たなLOX-1阻害物質となる試薬の購入、動物購入費用、細胞培養費用に使用の予定である。 ヒトnHIEのバイオマーカー開発実験に関しては、収集した検体のsLOX-1測定費用、論文執筆費用、学会発表費用に使用の予定である。
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