2015 Fiscal Year Research-status Report
水疱性類天疱瘡における制御性T細胞の解析および細胞療法への応用
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15K19667
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
氏家 英之 北海道大学, 大学病院, 助教 (60374435)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自己免疫疾患 / 水疱性類天疱瘡 / IPEX症候群 / 17型コラーゲン / 疾患モデル動物 / 制御性T細胞 / Scurfyマウス / ノックアウトマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
1)制御性T細胞(Treg)欠損マウス(Scurfyマウス)が産生する抗表皮基底膜部抗体の標的抗原の同定 Scurfyマウスの皮膚炎の組織を観察したところ、表皮真皮境界部に著明な炎症細胞浸潤が見られたが、水疱形成は見られなかった。Scurfyマウスの皮膚を用いた蛍光抗体直接法と血清を用いた蛍光抗体間接法を行ったところ、Scurfyマウスは抗表皮基底膜部自己抗体を産生していることが明らかとなった。その自己抗体は1M食塩水剥離皮膚のroof sideに反応した。そのことから、Scurfyマウス自己抗体が認識する表皮基底膜部標的タンパクはCOL17とBP230の可能性が高いと推測した。それぞれのリコンビナントタンパクを用いてウエスタンブロット法を施行したところ、Scurfyマウス自己抗体はマウスCOL17全長タンパクとマウスBP230のC末端とrodドメインのリコンビナントタンパクには高率に反応した。以上より、遺伝子変異による制御性T細胞欠損によって、マウス体内には水疱性類天疱瘡抗原であるCOL17およびBP230に対する自己抗体が誘導されることが明らかとなった。 2)アクティブBPマウスモデルにおけるTregの解析 アクティブBPマウスモデルの作成にはRagKO/COL17ヒト化マウスが必要であるが、現在実験に必要な数のマウスが確保できていないため繁殖を進めている。最近ようやく量産体制に入ったため今後の研究の進展が期待できる。アクティブBPマウスモデルにおけるTregの継時的変化を解析し、末梢血および脾臓のTreg数(CD4+Foxp3+)数の推移を測定する。また、各種マーカーの発現(CTLA-4, GITR, GARP, CD39)、サイトカインの産生(IL-10)などを経時的に測定し、コントロールマウスのTregと比較する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)Treg欠損マウス(Scurfyマウス)が産生する抗表皮基底膜部抗体の標的抗原の同定 Scurfyマウスの皮膚を用いた蛍光抗体直接法と血清を用いた蛍光抗体間接法を行ったところ、Scurfyマウスは抗表皮基底膜部自己抗体を産生していることが明らかとなった。その自己抗体は1M食塩水剥離皮膚のroof sideに反応した。そのことから、Scurfyマウス自己抗体が認識する表皮基底膜部標的タンパクはCOL17とBP230の可能性が高いと推測した。それぞれのリコンビナントタンパクを用いてウエスタンブロット法を施行したところ、Scurfyマウス自己抗体はマウスCOL17全長タンパクとマウスBP230のC末端とrodドメインのリコンビナントタンパクには高率に反応した。一方、病原性が高いと考えらえるマウスCOL17-NC14Aドメインタンパクには反応が見られなかったため、Scurfyマウス血清中の抗COL17抗体は病原性が低いと考えられた。また、BP230のN末端タンパクにも反応はほとんど見られなかった。 2)アクティブBPマウスモデルにおけるTregの解析 アクティブBPマウスモデルの作成にはRagKO/COL17ヒト化マウスが必要であるが、繁殖が難しい。特にRagKOマウスのメスは繁殖力が低いため、一度RagKO/COL17ヒト化マウスオスとCOL17ヒト化マウスメスを交配し、RagKOヘテロ/COL17ヒト化マウスを作成した。現在はRagKOヘテロ/COL17ヒト化マウスのオスとメスを交配し、RagKO/COL17ヒト化マウスの繁殖を進めている。 以上より、上記2)は遅れているものの1)の進捗が予定以上であり、全体としては概ね計画通り進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
Scurfyマウス血清中の抗基底膜部自己抗体の標的抗原がCOL17およびBP230であることが同定できたため、次に制御性T細胞の欠損(Foxp3の遺伝子変異)によって生じるIPEX症候群患者血清中にCOL17およびBP230に対する自己抗体が存在するかどうか確認する。それを行うにあたり、IPEX症候群血清を解析する旨の自主臨床計画書を作成し、北海道大学病院の倫理委員会にて承認された。 加えてアクティブBPマウスモデルにおけるTregの解析を実施する。アクティブBPマウスモデルの末梢血および脾臓のTreg数(CD4+Foxp3+)数の推移を測定する。また、各種マーカーの発現(CTLA-4, GITR, GARP, CD39)、サイトカインの産生(IL-10)などを経時的に測定し、コントロールマウスのTregと比較する。次に、アクティブBPマウスモデルを用いたTregの治療効果についての研究を実施する。野生型マウスあるいはCOL17ヒト化マウスの脾臓よりCD4+CD25+T細胞を抽出し、あらかじめ抗CD3/CD28抗体をコートしておいた24 well plate上でIL-2を含む培地で培養する。Day6-8で回収し、細胞数およびFoxp3発現を確認する。この方法でFoxp3陽性率が低い場合は、野生型マウスの代わりにFoxp3-GFPレポーターマウスを使用し、GFP陽性CD4+T細胞を抽出することで、より精製度の高いTregを得る。このPolyclonal activated TregをアクティブBPマウスモデルに投与し、血清中の抗ヒトCOL17IgG抗体価や皮疹の経時的変、血中および脾臓のTreg数の継時的変化などを行う。以上の実験で得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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Causes of Carryover |
前述の通り、アクティブBPマウスモデルの作成に必要なRagKO/COL17ヒト化マウスの繁殖に難渋したため、アクティブBPマウスモデルの解析が計画よりも遅れた。そのため、マウスの解析に用いる消耗品の購入費が予定よりも大幅に小さくなった。また、研究実施の都合上、当初予定していた海外学会に参加しなかったため旅費が予定よりも小さくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
マウスの植皮、脾細胞の精製、脾細胞移植、モデルマウスの抗体価測定、血清サイトカインの測定、HE染色、フローサイトメトリー用抗体、ELISAキット、CD4+T細胞精製等に用いる試薬・実験キットの購入に90万円、実験動物の購入に20万円、実験を行うにあたり必要となるプラスチック製品(ピペットのチップ、エッペンドルフチューブなど)に10万円、情報収集および学会発表の旅費として30万円、印刷代や論文投稿料、動物飼育などに35万円、平成28年度交付額とあわせて計約185万円の使用を計画している。
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