2015 Fiscal Year Research-status Report
白斑症治療を目的とした幹細胞からの色素細胞誘導とメラニン産生・蓄積制御機構の検討
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15K19672
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
土山 健一郎 東北大学, 大学病院, 助教 (50711743)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 再生医療 / 色素細胞 / 尋常性白斑 / Muse細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト脂肪組織から単離したMuse細胞を色素細胞に文化誘導することに成功した。 外科的手術の際に廃棄された余剰脂肪を1型コラゲナーゼで酵素処理することによって、脂肪組織に存在する脂肪幹細胞を単離した。この脂肪幹細胞を stage specific embryonic antigen 3(SSEA-3)で染色し、FACSによってSSEA-3陽性細胞を選別することにより脂肪組織由来Muse細胞を樹立した。 脂肪組織由来Muse細胞をWnt3, stem cell factorなど10種類の試薬を含む誘導培地で6週間培養した結果、形態が色素細胞様になりヒト色素細胞とほぼ同じレベルの色素細胞特異的な遺伝子、タンパク質の発現をしていることが確認された。また、この6週間培養した細胞をメラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)を含んだ誘導培地でさらに3週間培養すると色調が黒色に変化した。誘導後のMuse細胞はL-DOPA反応に陽性であった。以上のことから、脂肪組織から単離されたMuse細胞から色素細胞が誘導できることが分かった。 この脂肪組織由来Muse細胞から作成した色素細胞を混ぜた三次元培養皮膚を作成し、HE染色や免疫組織化学法で検討したところ、Muse細胞由来色素細胞はヒトメラノサイトと同様に基底層に位置しており、tyrosinaseなどの色素細胞特有の蛋白を発現していた。また、周囲の角化細胞を観察した結果、gp100陽性所見を認めたため、Muse細胞由来色素細胞から周囲のケラチノサイトにメラニンを渡していることを確認できた。 以上のことから、脂肪組織由来Muse細胞から作成した色素細胞は、生体内でもヒトメラノサイトと同等の機能を持つことと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト皮下脂肪組織由来のMuse細胞が、ヒト線維芽細胞由来Muse細胞と同等の機能的な色素細胞へ分化することが確認された。このことからMuse細胞から色素細胞を誘導する方法は確立できたと考える。また、Muse細胞由来の色素細胞は、色素細胞刺激ホルモンやその他の下垂体ホルモンで細胞内でのメラニン産生が増加することを確認した。さらに、脂肪組織由来Muse細胞から作成した色素細胞を混ぜた三次元培養皮膚を作成することに成功した。この培養皮膚を観察したところMuse細胞由来の色素細胞はヒトメラノサイトと同様に基底層に位置しており、メラニンを産生し、周囲のケラチノサイトにメラニンを渡していることを確認できた。脂肪組織由来Muse細胞から作成した色素細胞は、生体内でもヒトメラノサイトと同等の機能を持つことと考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
3次元培養皮膚内でMuse細胞由来色素細胞が生存し、メラニン産生とメラニンの角化細胞への移譲をおこなっていることが確認できたので、今後は、メラニン移譲に関わる膜輸送関連分子の発現について検討する。 また、Muse細胞由来色素細胞の効率の良い文化誘導方法や細胞数を増やす方法を検討する。 さらに、ヒト色素細胞とMuse細胞由来色素細胞のメラニン移譲関連分子の発現の違いや、三次元培養皮膚内での遊走能の違いなどを検討する。
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