2015 Fiscal Year Research-status Report
覚醒安静時脳波の視床発生説を単一細胞レベルで検証する
Project/Area Number |
15K19724
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
平井 大地 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, リサーチアソシエイト (40746939)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電気生理学 / 大脳皮質 / 視床 / 脳波 / ヒゲ感覚系 / バースト発火 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルファ波(8-13Hz)は脳波を形成する基礎律動(背景脳波)の一つであり、覚醒安静時の大脳の神経活動の一部を電位変動として捉えていると考えられている。そのため覚醒時アルファ波は、古くから様々な意識障害、神経疾患に対する臨床検査の主要な指標として広く用いられている。しかしながら、アルファ波を含む覚醒時脳波が脳のどこからどのようにして生じるのか、未だはっきりした研究はなかった。新たに発見した覚醒安静時の視床ニューロンのアルファ振動発火は、相互神経連絡のある皮質領域の破壊後に現れるものであり、覚醒安静時脳波の視床発生説を検証する上で極めて有効な突破口になると考えられる。 申請者らは、覚醒頭部固定ラットの、顔面の長いヒゲの感覚に関わる視床中継核(VPM核)と視床網様核から単一ニューロンの神経活動を、ガラス電極を用いた細胞外記録法(傍細胞記録法)で記録した。ヒゲ感覚に関わる一次体性感覚野(S1バレル野)を硝酸銀処理により破壊した個体において、S1バレル野から神経投射を受けるVPM核と網様核のニューロンの自発発火に約100 ms間隔(アルファ帯域)のバースト発火が顕著に出現した。 健常個体では上記の現象は殆ど確認されなかったことから、視床の覚醒アルファ振動は、普段皮質から抑制的な制御を受けている可能性が考えられる。S1破壊後に相互神経連絡のある感覚性視床中継核において顕著に出現したアルファ振動の存在は、その存在自体がアルファ振動の皮質発生説を強く否定するとともに、視床発生説を単一細胞レベルで検証する上で極めて有効な対象になりうる。また視床VPM核の中継ニューロンは、視床網様核の反回性抑制性ニューロンとループ回路を形成しており、視網様核でも同様のアルファ振動が見られることから、この反回抑制ループ回路におけるアルファ振動の発生機構の解明が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新しく発見した視床系の覚醒アルファ振動現象について、麻酔下動物における視床系の神経発火様式との比較を行うため、データ解析を進めた。その結果、皮質破壊動物で生じる覚醒アルファ振動は、麻酔下で記録された視床系におけるLTSバースト発火と同様のスパイク列構造(Inter-spike-intervalの分布の類似性)を示すことが明らかとなった。これらのデータの一部は平成27年度中に学会発表することができた。以上から、研究活動は概ね計画通りに進展しており、全体として特に遅れはない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られたデータを解析し、学会発表および論文・著書の出版を通じて成果発表を行う。
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Research Products
(3 results)