2015 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症における包括的認知機能の全ゲノム関連解析
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15K19726
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
工藤 紀子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 招へい研究員 (30751151)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 統合失調症 / GWAS / 認知機能障害 / 分子遺伝機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大阪大学精神医学教室によりこれまでに構築された「ヒト脳表現型コンソーシアム」にて蓄積してきた、健常者および患者のデータを用い、同一サンプルにおいて、同時に複数の認知機能の網羅的なGWASを行い、さらに、同定した遺伝子多型近傍の遺伝子のネットワーク解析を行うことで、統合失調症の認知機能障害に特徴的な分子遺伝機構を解明することを目的としている。本研究により、統合失調症の新たなリスク遺伝子や遺伝子ネットワークを同定し、その機能を明らかにすることは、統合失調症の病態を解明し、新たな治療薬の開発のための基盤となるとともに、ヒトの脳における表現型に関連する遺伝子ネットワークを見出すことにもなり、臨床的に期待されるだけではなく、脳科学研究としてもとても意義深いものであると考えている。 本年度は、全ゲノムのジェノタイピングが終了した健常被験者300名の認知機能データを用いて、知的機能、記憶機能、注意機能、実行機能、社会認知など、全部で52個の認知機能のGWASを網羅的に行い、認知機能に関わるSNPを同定することを試みた。さらに、統合失調症患者150名をreplicationサンプルとして用い、統合失調症に関わるSNPや、認知機能に影響を与えるSNPの同定を行った。この結果、記憶などの認知機能と関連するSNPが明らかとなり、今後予定している遺伝子ネットワーク解析が、大いに期待されるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、健常者および統合失調症患者のデータを用い、同一サンプルにおいて、同時に複数の認知機能の網羅的なGWASを行い、さらに、同定した遺伝子多型近傍の遺伝子のネットワーク解析を行うことで、統合失調症の認知機能障害に特徴的な分子遺伝機構を解明することを目的としている。 本年度は、全ゲノムのジェノタイピングが終了している健常者300名の認知機能データを用いて、知的機能、記憶機能、注意機能、実行機能、社会認知など、全部で52個の認知機能のGWASを網羅的に行った。単一施設で集められるサンプル数には限界があり、数百のサンプル数では、P<5.0E-8といったゲノムワイド有意を満たすSNPを見出すことは難しいと考えられる。しかし、ポリジェニックスコアの解析結果より、GWASアレイ上には、弱い効果でも認知機能に関わるいくつかのSNPの存在が示されているため、スクリーニングとしてはP<1.0E-4という緩い閾値を設定してSNPの検出を行った。さらに、統合失調症患者150名を用いて、GWASで検出したSNPのreplicationも行った。これらの解析により、記憶などの認知機能と関連するSNPが明らかとなり、このことは次年度以降に計画している、遺伝子ネットワークや今後の発展に期待し得るため、本研究は、計画通り順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、健常者および統合失調症患者のデータを用い、同一サンプルにおいて、同時に複数の認知機能の網羅的なGWASを行い、さらに同定した遺伝子多型近傍の遺伝子のネットワーク解析を行うことで、統合失調症の認知機能障害に特徴的な分子遺伝機構を解明することを目的としている。 次年度は、さらにサンプル数を拡大するために、健常者と統合失調症患者のサンプル収集を継続して行い、これによりサンプル数を健常者400名と、統合失調症患者250名とに拡大する。その上で、本年度と同様の手法を用いて、知的機能、記憶機能、注意機能、実行機能、社会認知など52個の認知機能のGWASを網羅的に行い、さらに統合失調症患者でその結果のreplicationを行う。また、GWASとreplicationの結果のメタアナリシスも行い、認知機能に関わるSNPを同定する。次に、疾患やそれらの表現型と関連するSNPは、遺伝子の周囲10kb以内に多く存在するというデータを基に、同定したSNPの10kb以内にある遺伝子を選択し、遺伝子ネットワーク解析を行うことで、統合失調症の認知機能に特徴的な遺伝子ネットワークを同定し、認知機能障害に関わる分子遺伝機構を解明する。本研究により、統合失調症の新たなリスク遺伝子や遺伝子ネットワークを同定し、その機能を明らかにすることは、統合失調症の病態解明に、大いに貢献することを期待するものである。
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Causes of Carryover |
実験を行う短時間勤務の補助者を雇用する予定であったが適任者が見つからず人件費として計上していた金額が未使用となったが、研究代表者が実験を行うことで研究は計画通りに進み研究遂行には全く問題がなかった。加えて非常に効率よく実験が進んだため試薬等の購入を抑えることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験補助者については適任者が見つかり次第採用し、更に実験活動を活発化させさらに研究を発展させていく予定である。また、実施予定の実験増加に伴い、必要な実験消耗品が増えると予想されるためその購入費用にも充てる予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Glutamate networks implicate cognitive impairments in schizophrenia: genome-wide association studies of 52 cognitive phenotypes.2015
Author(s)
Ohi K, Hashimoto R, Ikeda M, Yamamori H, Yasuda Y, Fujimoto M, Umeda-Yano S, Fukunaga M, Fujino H, Watanabe Y, Iwase M, Kazui H, Iwata N, Weinberger DR, Takeda M
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Journal Title
Schizophrenia Bulletin
Volume: 41
Pages: 909918
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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