2015 Fiscal Year Research-status Report
精神疾患の診断におけるepigenetic biomarkerの開発
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15K19748
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
菅原 裕子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (90610692)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 統合失調症 / 双極性障害 / エピジェネティクス / DNAメチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
双生児研究などの疫学研究によって統合失調症や双極性障害の遺伝率は60~80%と高いことが知られている。これまでに大規模なgenome-wide association study (GWAS)が盛んに行われ、統合失調症や双極性障害において、多数の候補遺伝子が同定されているものの、オッズ比が2を超えるような効果の大きい遺伝因子は同定されていない。一方で、様々な精神疾患は共通の遺伝要因をもつこと、特に統合失調症と双極性障害は遺伝要因の重なりが大きいことが明らかにされている。 エピジェネティクスの分子基盤の1つであるDNAメチル化は環境要因の影響を受けて変化し、遺伝子の長期的な発現調節に寄与することから、環境要因の作用メカニズムに関する知見を得ることができる。近年、統合失調症において大規模なmethylome-wide association study (MWAS)が行われ、統計学上有意なDNAメチル化変化領域が5ヶ所報告された。これまで遺伝要因が精神疾患間である程度共通しているという知見は得られているが、エピジェネティックな要因が疾患間で共通しているかどうかの検討はなされていない。本研究課題では、統合失調症のMWASで同定された5ヶ所の領域について双極性障害で大規模なDNAメチル化解析を行い、エピジェネティックな要因が、統合失調症と双極性障害でリスクとして共有されているかどうかの検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究である統合失調症のMWASでメチル化差異が同定された5つの候補領域におけるメチル化レベルについて、年齢をマッチさせた双極性障害患者と健常者各約500名の末梢血由来DNAを用いて、pyrosequencingを行った。Pyrosequencingは、先行研究で報告された手法に厳密に従って行った。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト神経系培養細胞(SH-SY5Y)ならびに健常者由来リンパ芽球を各種向精神薬(抗精神病薬、気分安定薬、抗うつ薬など)添加培地で培養し、同様にpyrosequencingを行い、5つの候補領域のメチル化レベルを測定する。薬剤添加培地と非添加培地におけるメチル化差異を調べ、5つの候補領域のメチル化レベルに対する向精神薬の影響を調べる。 未投薬の精神疾患患者(統合失調症、双極性障害、うつ病)の末梢血由来DNAを用いて、同様にpyrosequencingを行い、5つの候補領域のメチル化レベルを測定し、各疾患と健常者との比較を行い、精神疾患の診断におけるepigenetic biomarkerとしての有用性を感度・特異度を用いて評価する。
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Causes of Carryover |
当初細胞培養実験は初年度に行う予定にしていたが、次年度に繰り越すことになったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
細胞を用いた投薬実験や新たな検体を用いたメチル化レベルの測定を行うための試薬等に使用する他、研究成果に関する学会発表のための旅費等に使用する。
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