2015 Fiscal Year Research-status Report
一卵性双生児不一致例のiPS細胞由来神経細胞を用いた双極性障害の分子病態解明
Project/Area Number |
15K19753
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
澤田 知世 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (90708471)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 双極性障害 / iPS細胞 / 一卵性双生児 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.一卵性双生児由来iPS細胞の品質確認:双極型失調感情障害不一致例の一卵性双生児末梢血単核球より樹立したiPS細胞の神経分化能確認および分化抵抗性クローン除外のため、各8クローンのiPS細胞を用いてSFEBq法による神経分化誘導実験を行い、2週間後の神経前駆細胞マーカーPSA-NCAMおよび未分化マーカーTRA-1-60の陽性率をFACSで評価した。双生児間で神経分化能に差はなく、分化抵抗性を示すクローンも認められなかった。分化抵抗性クローンマーカー遺伝子のpyro sequencingによるメチル化解析結果も踏まえ、各8クローンの中から特にPSA-NCAM陽性率の高かった各2クローンを選別し、今後の解析に用いることとした。2.iPS細胞由来神経前駆細胞のトランスクリプトーム解析およびメチル化解析:一卵性双生児由来iPS細胞からSFEBq法を用いて神経前駆細胞を誘導し、誘導8日目と24日目の細胞を用いてRNA-seqによるトランスクリプトーム解析およびビーズアレイを用いたメチル化解析を行った結果、双生児間で、神経細胞のパターニング等に関わる遺伝の発現量およびメチル化パターンに差異を見出した。また、神経前駆細胞の遊走試験を行った結果、双生児間で遊走能に差があることを見出した。3.iPS細胞由来神経細胞の機能・形態解析:iPS細胞から分化誘導した成熟神経細胞の機能について、パッチクランプ法、カルシウムイメージング等を用いて解析中である。また、双生児間における神経細胞の形態の差異についても解析を進めている。4.de novoゲノム変異の探索:一卵性双生児およびその両親の末梢血由来ゲノムDNAを用いた全ゲノム解析結果から、de novo変異(一塩基変異、コピー数変異、トランスポゾン挿入変異)候補を絞り込み、PCR-ダイレクトシーケンス法による変異の確認を行ったが、現時点では明らかに罹患双生児のみに認められる変異を見出すことはできていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画から多少の変更点はあるが、平成27年度に予定していた解析はほぼ終了し、すでに平成28年度に予定していた神経細胞の機能解析にも着手しており、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に計画していたisogenic iPS細胞の作製は、罹患双生児特異的なde novoゲノム変異が同定でき次第行う予定とする。今後は、トランスクリプトーム解析およびメチル化解析の結果の再現性を確認し、これらの差異が成熟神経細胞の機能・形態解析に及ぼす影響について検討するとともに、双生児両親のiPS細胞由来神経細胞を含めた解析により、双生児間で見出される差異の中でもより疾患との関連が強い表現型を明らかにする。また、これまでの分化誘導法を改変した3D培養法を用いることにより細胞間相互作用を再現し、より生理的な条件下においても認められる双生児間の差異を探索する。
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