2015 Fiscal Year Research-status Report
うつ病患者の血清及び脳脊髄液中におけるリゾホスファチジン酸の定量解析
Project/Area Number |
15K19758
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
後藤 玲央 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所精神薬理研究部, 流動研究員 (70625194)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | バイオマーカー / ケースコントロールスタディー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は細胞増殖等の生理機能に関与し、中枢神経系の発達や情動行動,抗うつ薬の作用機序に関与する脂質メディエーターのリゾホスファチジン酸(LPA)を対象に新規うつ病バイオマーカーとしての臨床応用可能性を検証することを目的としている.研究計画書では平成27年度中にELISA法を用いたLPA測定系の確立と年齢と性別をマッチさせた未治療うつ病患者と健常対照者の2群,各13名の血漿及び脳脊髄液中のLPA濃度の定量解析を到達目標としている。 平成27年度は最初にサンプルの提供スケジュールについてNCNPバイオバンクとの交渉を行い、第1段階として倫理的問題の無いヒト標準サンプル(脳脊髄液および血漿)の提供を受け、測定系の確立を行うことが決定した。ヒト標準サンプルを用いた実験により、1回の測定に必要な最小サンプル量は6μl前後であることが判明し、貴重なヒトサンプルを無駄なく活用する計画を立てることが可能となった。 次に、幅広い重症度の患者が含まれている大うつ病患者群26例(うち4例が未治療)、統合失調症患者群27例(うち3例が未治療)、健常対照群27例からなるプレ解析用サンプル群の提供を受け、本格的な定量解析へと移行した。この実験の結果、うつ病患者の抗うつ薬服薬量および統合失調症患者の定型向精神薬服薬量の増加とともに脳脊髄液中のLPA濃度が減少する傾向が示された。この結果は、過去の動物実験により示唆されたうつ病の治療に伴いLPA分解を促進する経路が活性化するという事実と一致するものであった。 また、これらの結果を踏まえてNCNPバイオバンクと今後の研究方針について打ち合わせを行ったところ、本研究の推進のため、未治療患者を中心とする追加サンプルの提供が決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では平成27年度に到達する目標を「1)重症うつ病患者と健常対照群を比較したケースコントロール研究と2)幅の広い重症度の未治療患者サンプルを用いた検討の実施」と設定し、未治療かつ重症のうつ病患者サンプル13例と、対応する健常対照群の測定を予定していた。 現時点までに、申請者は26例ずつの幅広い重症度の未治療・投薬済み患者を含む大うつ病、統合失調症および健常対照群の脳脊髄液中のLPA濃度の測定を完了している。 これは27年度目標の一つである「幅の広い重症度の未治療患者サンプルを用いた検討」と28年度目標の一つである「他の精神疾患患者サンプルとの比較による疾患特異性の検討」を行った結果に該当し、サンプル数は当初の予定の2倍となっている。 この解析内容の一部変更はサンプル提供元であるNCNPバイオバンクが、サンプル譲渡を行う研究者に対して、最初に幅広いサンプルを用いたプレ解析を行うことを要求しており、その結果を基に貴重なサンプルの追加譲渡を決定する方針としていることが理由である。前年度の結果を元にNCNPバイオバンクと交渉を進めた結果、脳脊髄液・血漿ともに各群26例ずつのサンプルの追加が決定した。また追加サンプル群は可能な限り多くの未治療患者・重症患者サンプルを含むものとなっている。 また、倫理審査手続き上の問題があったため、血漿サンプルの測定については本年度に行うこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は解析を進める順序について若干の変更があったものの、順調に推移している。サンプル数についても計画では13例であったが、平成27年度中は26例のサンプルの解析を行った。さらに本年度も26例の追加サンプルを受け取る予定となっているおり、計画の4倍の52例の解析が本研究期間中に完了することとなる。 平成28年度は研究計画に従い解析を進め、学会・論文等での報告を目指す。
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Research Products
(1 results)