2016 Fiscal Year Annual Research Report
Verification of abnormality of postnatal synapse formation/pruning in a primate model of ASD
Project/Area Number |
15K19759
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
佐々木 哲也 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 微細構造研究部, 科研費研究員 (10634066)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 霊長類 / 自閉症モデル / シナプス / 樹状突起 / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの大脳皮質では、出生直後から幼児期にかけて興奮性シナプスが急速に増え、児童期に最大値に達した後、減少するということが知られている(オーバーシュート型シナプス形成)。このシナプスの「刈り込み」は、霊長類の機能的な神経回路を作り上げるために不可欠な過程とされる。近年、このシナプス形成のダイナミクスの異常が、様々な精神疾患に関与していることが明らかになりつつある。自閉症スペクトラム障害(ASD)の脳ではシナプス数の増加率が大きく、その後の刈り込みが少ないため、過剰なシナプスが維持されており、スムーズな情報伝達ができないと考えられている。 本研究では、他個体へ注意を向ける時間が短い、固執性を示すなどDSM-5の診断基準を満たす自閉症様行動を示す胎生期バルプロ酸(VPA)曝露マーモセットの大脳皮質において、ヒトASD患者の「オーバーシュート型」シナプス形成の異常が再現できるか検討を行った。我々は、生後0日齢, 2ヶ月齢(乳児),3ケ月齢(幼児), 6ヶ月齢(青年期)のVPAマーモセットの前頭前皮質(12野)と一次視覚野(V1)の第3層錐体細胞に蛍光色素ルシファーイエローを注入して基底樹状突起全体を可視化した。VPAマーモセットは、定型発達個体と比較して生後2か月齢以降大きな樹状突起展開面積を持ち、どの発達段階においても長い樹状突起をもっていることがわかった。また、定型発達個体と比較して、VPAマーモセットのスパイン密度は生後2ヶ月齢以降上昇していることが観察された。定型発達個体では、生後3か月齢から6か月齢にかけて約30%スパイン密度が低下する「刈り込み」が起こるのに対して、VPAマーモセットでは統計的に有意な変化は観察されず、この霊長類モデル動物でASD患者のシナプス刈り込み不全を再現できていることが分かった。
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Research Products
(10 results)