2015 Fiscal Year Research-status Report
頭頚部癌動注患者に対するプラチナイメージングへの挑戦
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15K19762
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
佐々木 智章 旭川医科大学, 医学部, 講師 (60586874)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | シスプラチン / Dual energy CT |
Outline of Annual Research Achievements |
GE社製Dual energy CT(DECT)を用いてプラチナ製剤の画像化を試みる。 1)シスプラチンがDECTで描出されるかどうかについて;市販されている静注用シスプラチンは濃度50mg/100ml(=0.5mg/ml)であった。これを含んだバイアルと対照とする生理食塩水をDECTで撮像し、スペクトラルカーブ解析を行った。その結果、シスプラチンの吸収値は-3~87HUと分布し、生理食塩水は-10~2HUと分布していた。特に低keV再構成に分離が良くなる傾向が見られた。 2)動注用の高濃度シスプラチンがDECTで描出されるかどうかについて;動注用シスプラチンは濃度を調整することが可能であるので、それをDECTで撮像し描出できるかどうかを検討した。通常はシスプラチン濃度を1.43mg/mlで使用する。今回は70℃以上に加温した生理食塩水を用いて濃度5mg/mlと調整したものを『高濃度液』とし、これを2倍希釈して濃度2.5mg/mlとしたものを『2倍希釈』、さらに希釈して濃度1.25mg/mlとしたものを『4倍希釈』、さらに希釈して濃度0.625mg/mlとしたものを『8倍希釈』として調整した。対照として生理食塩水も同時に評価した。その結果、シスプラチン含有溶液の吸収値は高濃度液(62.8~88.8HU)>2倍希釈(26.2~42.7HU)>4倍希釈(12.6~21HU)>8倍希釈(2.4~11HU)>生理食塩水(-9.7~-4.8HU)の順であった。 3)DECTにおける肝実質スペクトラルカーブとの比較;様々な目的で肝臓が撮像範囲内に入っている8症例のDECTデータにおいて肝実質の吸収値は43.9~66.1HUで最大値は78HUであった。これを1)と2)の結果と比較すると、2)の高濃度液(5mg/ml)時でのみ肝実質より吸収値が高く描出できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高濃度のシスプラチン溶液(5mg/ml)がDECTで描出できる可能性については肝内で同様の密度で存在する必要がある。 しかし、実際の薬剤投与(静注および動注療法)での検出は難しい可能性が高い。一つに2倍に希釈された段階で肝実質より吸収値が低くなるため、肝実質のノイズの中に埋もれてしまうことが予想される。2つ目に、今回の高濃度シスプラチン(5mg/ml)は実験上の濃度であり、通常動注時に用いるシスプラチン濃度1.43mg/ml(2倍希釈の濃度2.5mg/mlと4倍希釈の濃度1.25mg/mlの範囲内)と比較すると非常に高濃度である。そのため、動注療法で使用できる濃度ではDECTで試験管上は描出できるが、肝実質内において別の組織と区別できるかについて困難が予想されたが、ファントム実験にて腹部に留置したシスプラチンを評価したい。 結果として、今回のDECTにおける精度では臨床で使用できる低濃度のシスプラチンを特異的に描出することが困難であることも予想されるので、今後についてはDECTの使い方および精度の見極めも含めて検討する必要が出てきた。
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Strategy for Future Research Activity |
シスプラチンのDECT描出においてはシスプラチン濃度に比例してDECT吸収値が上昇する傾向はあったので、投与できる物理量が増やせる薬剤が出てくる。または病変でシスプラチンが凝集する薬物動態を示す場合ではシスプラチンをこのDECTで定量できる可能性はある。 その前に、DECTの使い方と精度について見極める必要も出てきたので、プラチナだけではなく、生体内に広く存在するヨードを含めた物質まで対象を広げてDECT研究を行っていく。具体的には甲状腺腫瘍に対するヨードの定量を試みることを目標とする。分化型甲状腺癌に対して放射性ヨードによるRI内用療法が適応となる場合があるが、低分化型甲状腺癌ではその適応はない。これは分化型甲状腺癌はある程度ヨードを取り込む機能があるためと考えられている。そこで甲状腺内結節のヨード量が甲状腺結節の良悪、あるいは分化度を推定できる可能性がある。またRI内用療法の適応の有無についても有用な情報をもたらす可能性がある。
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Causes of Carryover |
概ね予算の範囲内で研究を進めていたが、翌年度に使用するファントム実験の費用が高額なため、今年度は少し節約したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ファントム実験のためのリース費用に組み込むことで、実験期間の安定な確保を計れる。
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